研究課題/領域番号 |
17K08745
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古屋 充子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10361445)
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研究分担者 |
田中 玲子 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (60143319)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Birt-Hogg-Dube (BHD) 症候群 / FLCN / 家族性腫瘍 / 腎細胞癌 |
研究実績の概要 |
BHD症候群遺伝子検査を行い、1年間で日本人20家系を新たにBHD症候群と診断した。FLCN胚細胞病的バリアントは計48となり、日本には少なくとも50近い創始家系があることが明らかとなった。1例の病理解剖症例について肺嚢胞病理像を3次元的に解析し、CT画像と病理組織像との対比から、他の嚢胞性肺疾患との違いを検討した(Furuya M, Nakatani Y, Pathol Int. 2019;69:1-12)。
BHD症候群との鑑別問題になる異時性多発腎癌やAYA世代の腎癌解析から、遺伝性平滑筋症腎細胞症候群、Xp11転座腎癌、腕内逆位腎癌などを同定し、報告を行った。遺伝性平滑筋症腎細胞症候群では10家系が遺伝子検査で確定できたが、発端者のほとんどは死亡あるいは多発転移に陥っており、家族のケアもされていなかった。
腕内逆位腎癌はXp11転座腎癌のようなFISHによるスプリットが起こらないため、診断保留や乳頭状腎細胞癌と診断されていた症例が少なからずあった。それらの中からRBM10-TFE3融合に絞って解析を行い、新規で10例を診断し、報告した(Kato I, Furuya M et al.Histopathology. 2019, in press)。興味深いことに、RBM10-TFE3融合腎癌の中には慢性腎不全を背景に発癌する症例が半数近くあり、それらのなかに両側腎癌が2例含まれていた。透析腎癌には乳頭状構造や淡明細胞型をとる腎細胞癌が含まれているが、TFE3の性状については検討されずに透析関連腎癌と診断されている例が多数あることが示唆される。今後それらのなかに含まれる若年発症例や高悪性度腫瘍例のTFE3腕内逆位の有無を明らかにする必要が出てきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年3月からBHD症候群遺伝子検査の先進医療が開始されるにあたり、必要な会議や事務手続きを行った。今後は先進医療だけで新規200例の遺伝子診断と、確定患者予後について正確な疫学調査を行う必要がある。BHD症候群との鑑別困難な家族性腎癌や若年発症タイプの腎癌などの解析例が増えてきたため、特に治療法に難渋する遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌症候群の解析に力を入れた。当初の予定から少しズレたが社会的ニーズが高い領域である。
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今後の研究の推進方策 |
BHD症候群腎癌発症は40代から上では35%に上ることが明らかになった。今後の調査で手術後のde novo 発癌や両側腎癌発症に関する更なる情報を付加していくことが求められている。BHD症候群以外の家族性腫瘍や希少型、特に遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌症候群とTFE3融合を持つ腎腫瘍についても、本邦での疫学は皆無であり確定診断がついていない症例が多数あることが示唆された。AYA世代の腎癌死を減らすためにも、症例を集積して確定診断例を増加させて、診断と治療に有用な情報を発信していく予定である。
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