研究課題/領域番号 |
17K08753
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
佐藤 由紀子 公益財団法人がん研究会, 有明病院 病理部, 副医長 (30365712)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 融合遺伝子 / 細胞診 / LBC |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、唾液腺腫瘍における細胞診の診断精度をあげ、治療選択および予後予測に役立てることにある。近年、唾液腺癌は治療標的がみつかり、組織型に基づいた化学療法の選択が可能となりつつある。組織型確定により治療選択が変わる可能性があるのは分子標的を有するか、鑑別疾患と治療戦略が異なる分泌癌(SC)、唾液腺導管癌(SDC)、腺様嚢胞癌(ACC)、硝子化明細胞癌(HCCC)である。細胞診は採取細胞数が限られることから形態による検索項目の絞り込みが重要で、その組み合わせを決定することが最終目標となる。 本年はSDCについて更に他施設共同研究にて、共同研究者らが発表した。我々はACCはMYB, MYBL1の異常発現により発症すると考えており(冨樫ら 2018)、新たに臨床的な解析を行い発表した(瀬戸、佐藤ら 2018)。その結果は原発腫瘍径、リンパ節転移の有無、組織学的悪性度で全生存期間に有意差を認めたが、遠隔転移の有無、stage、MYB/MYBL1 再構成の違いによる有意差は認めなかった。この結果を踏まえるとACCは原発が大きくなる前に診断を確定する必要があると考える。しかし、背景としてACCは形態的に良悪性の多数の組織型が類似することから、診断確定自体が難しい。早期の検査として実施される穿刺吸引細胞診での診断確定は更に難しく形態のみでの判断は難しく、補助的な検査が必要である。これまでにMYB, MYBL1の転座を有するACCのうち、細胞診で悪性と判断できたのは40%と報告した(佐藤 2016)。悪性という判断に至れなかった症例にはFISH検査を追加施行することでが診断確定できる可能性がある。現在は新規症30例/年に対し、組織での融合遺伝子検索を継続実施中で、同時に実臨床に近づけた手術検体からの穿刺吸引細胞診検体、特に今年度は液状化検体の集積も行い、実臨床への応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
職場の業務分担の変化と他の研究の分担分が最終年のまとめの時期にあったため、本研究はやや遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
業務分担については、以前よりも増えたものの方針が定まって調整がついたため、研究の時間を増やすことが可能になった。他の研究費の分担分については、それらが完了したためその分についても本研究にまわせることになるため、本年は推進できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は部全体の体制変化に伴い、個人としての業務分担などに大きな変化があったこと、他の研究分担の最終年のまとめの時期にあり、本研究の遂行が難しかった。次年度は体制も整い分担も定まり、他の研究は終了したため、本研究に専念できる時間も取れる見込みで、予定していた研究を進めることが可能です。 本年度に蓄積してきた検体の解析と次年度分に集積する検体を同時に効率よく解析できる見込みで、費用は予定通り薬品等に使用し、発表、論文化も積極的に行っていきたいと考えている。
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