研究課題
本研究の目的は唾液腺腫瘍における細胞診の診断精度をあげ、治療選択および予後予測に役立てることにある。近年、組織型により治療が変わる可能性があるのは分子標的を有するか、鑑別疾患と治療戦略が異なるもので、術前に組織型が正確にわかることは治療上有利である。術前に行われる穿刺吸引細胞診(FNAC)は複製不可能な検体であり、採取細胞数も限られることから、形態による検索項目の絞り込みが重要で、その組み合わせを決定することが研究の最終目標となる。これまでの蓄積により、形態から3群程度に絞り込み、MAML2+EWSR1、MYB+MYBL1、ETV6+NR4A3のいずれかに絞り込み、FISH法を施行することが有用というところまで達した。細胞診の検体でFISH法を実施するうえでは、塗抹範囲が広いことと、細胞が重なることに解析上の問題がある。そこで、LBC検体を複数用意して、形態所見、FISH法の観察、核酸抽出上の問題がないか、などを検討していく段階に入った。実際の臨床応用を考え、細胞検査士らの協力も得ながら進めている。症例の蓄積には時間がかかるため、再延長としたが、融合遺伝子の発現が確認されている組織型の症例での実施を行っている。2019年に比較して、2020年、2021年は唾液腺癌の手術が6割程度まで減少し、診断に影響しない十分な腫瘍サイズがある症例は多くないため、若干の遅れが生じている。2022年に入り、手術数も回復傾向にあることから、症例蓄積を試みたいと考えている。LBC液での形態的な検討は多いが、唾液腺癌でかつ、幅広い唾液腺癌の組織型について検討できる施設は少ないため、当施設の特徴を活かして集積したいと考えている。
3: やや遅れている
症例の蓄積には手術数が影響し、唾液腺癌の手術数が2019年に引き続き2020年で6割程度に減少している。ソーシャルディスタンスなどもあり、検体の受け渡しなど困難な状況であったため、減少したが、2022年は社会情勢的にも緩和され、対応可能になりつつある。
様々な研究が立ち上がり継続されているなかで、検体提出もスムーズになってきており、今後の症例蓄積は比較的容易になりつつある。細胞検査士、FISH法担当の臨床検査技師らの協力も得られ、環境が整ったため、進められる状況となった。
LBC液選定中であり、検討後に確定した薬液を購入予定であるため、次年度使用額が発生することとなった。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
Modern pathology
巻: 34(1) ページ: 1979-1989.
Case reports in dentistry
巻: 2021 ページ: 5557247
Cancer management and research
巻: 13 ページ: 8377-8385
Frontiers in oncology
巻: 11 ページ: 779882-779882