研究課題/領域番号 |
17K08754
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構茨城東病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
南 優子 独立行政法人国立病院機構茨城東病院(臨床研究部), 病理診断部, 病理診断部長 (20466676)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 喀痰 / DNA / 遺伝子変異 / 肺癌 / 早期発見 / NGS |
研究実績の概要 |
喀痰細胞診は被験者に対して、非侵襲的な検査方法であり、特に肺門部肺癌の発見に有用な方法の1つである。そのため、各自治体では重喫煙者や血痰などの症状があるまたは過去にあったことがある検診受診者に対して、喀痰細胞診による検診を行っている。また、医療機関でも血痰、喀痰の増加、継続する咳嗽などの症状を有する患者に対して、肺癌のスクリーニングなどを目的に喀痰検査が行われる。喀痰には、細胞診で発見される腫瘍細胞以外にもその産物、破壊物が含まれていると考えられ、被験者の肺内の環境を表している貴重な試料である。一方、我が国の肺癌検診では喀痰細胞診は胸部X線検査と併用で有用性が認められているものの喀痰細胞診単独でのがん発見率は平均0.1%程度に留まっている。そこで、喀痰を細胞診断のみの診断材料として用いる他に、喀痰中の癌細胞関連核酸を用いた安価でかつ簡易な診断法を開発し、肺癌高危険群の抽出や、癌そのものの発見率向上を目指し、効果的なスクリーニングや分子標的薬のための再生検に代わる方法としての一助も担いたいと研究を計画した。 茨城県内の国立病院機構茨城東病院(茨城県那珂郡東海村)と筑波大学附属病院(茨城県つくば市)の2施設の肺癌および非肺癌患者よりサコマノ法での蓄痰による喀痰検査の診断後の残余喀痰検体を用い、肺癌の発生、発癌、増悪にかかわる遺伝子変異の探索が次世代シーケンサ(NGS)を用いて可能かどうかを選べる。肺癌危険群の抽出に応用できる程度の異常を明らかにできれば、喀痰材料を用いたNGS解析を実用化し、肺癌の早期発見に役立てる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに茨城東病院の残余喀痰件数は79例、筑波大学附属病院の残余喀痰件数は68例であり、サコマノ法で収集し、そのままサコマノ液に入れて4℃で保存した。これらの検体に対して、性別、年齢、臨床診断、細胞診断および組織が採取されているものは組織診断、組織での遺伝子診断があるものの遺伝子診断結果を臨床情報として得た。収集した喀痰1500ulを遠心し、沈渣すべてと上清180ulにpro K 20ulを加え、56度で90分加温してからPrecision Science systemの全自動核酸抽出、精製システムでDNA 抽出、精製を行い、Nanodropで抽出濃度を測定した。抽出されたDNAは解析までの間-80度で保存中である。 結果、国立病院機構茨城東病院の喀痰から抽出した検体79例中76例でDNAの抽出が行えた。Nanodropで測定したDNA量は2ng/ul~1057ng/ulであり、A230/260も76例中67例は1.702から2.010であり、良質なDNAの抽出が行えた。筑波大学附属病院の喀痰から抽出した検体68例中66例でDNAの抽出が行えた。Nanodropで測定したDNA量は0.6ng/ul~ 1218ng/ulであり、A230/260も66例中51例は1.702から2.069であり、良質なDNAの抽出が行えた。 これらのDNAから組織で腺癌、扁平上皮癌が確認できた検体をそれぞれ5例ずつ、悪性腫瘍が臨床的に確認できなかった症例5例の計15例をついて、Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いてAmpliconシークエンシングした。現在、予想以上の遺伝子異常を検出できており、今後どのようにvalidationしてくかを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いたAmpliconシークエンシングで得られた結果を詳細に検討し、発癌に密接に関わる遺伝子や転移、増殖に関わる遺伝子で、主として癌症例に発現しているものを選別し、対応する組織でも同様の遺伝子が抽出されるか検討する。さらに、癌症例の10例で喀痰の残余検体から標本を作成し 腫瘍細胞をMicro dissectionで選択し、その腫瘍細胞からDNAを抽出し、先にえられたAmpliconシークエンシングの結果と同様の遺伝子が得られるか解析する。 陰性喀痰(腫瘍なし)と陽性喀痰(腫瘍あり)の間で最も異なって検出される遺伝子異常をいくつか抽出し、これらをターゲットとした喀痰専用のパネルを作り、実際の喀痰材料を用いてパネルを用いたスクリーニングの実用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いたAmpliconシークエンシングを行ったが、当初の計画より安いPanelを使用したため、使用額が減少した。 今後は昨年度使用した喀痰に対応する組織でも同様の遺伝子が抽出されるかをIon AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いたAmpliconシークエンシングで検討する。さらに、癌症例の10例で喀痰の残余検体から標本を作成し腫瘍細胞をMicro dissectionで選択し、その腫瘍細胞からDNAを抽出し、先に得られたAmpliconシークエンシングの結果と同様の遺伝子が得られるか解析する。
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