研究実績の概要 |
喀痰検診に用いられる喀痰には、細胞診で発見される癌細胞以外にもその産物、破壊物が含まれ、被験者の肺内環境を表している試料である。現在まで、喀痰を用いた細胞診断は喀痰に含まれる異型細胞を形態学的に診断してきたが、本研究では細胞のみならず喀痰に含まれる核酸を用いた新しい診断法の開発を行うことを目的とした。 2019年度末までに611例の喀痰、class I,II 403例、class III 99例class IV, V 60例、判定不能49例を集積した。喀痰以外の検体で最終的に悪性診断がついたものはClass I, II 中101例(腺癌41例、扁平上皮癌33例、小細胞癌10例、その他17例)、Class III中 64例(腺癌17例、扁平上皮癌28例、小細胞癌10例、その他9例)で、 Class IV, Vの中で組織型は腺癌22例、扁平上皮癌23例、小細胞癌10例、その他5例であった。これらの喀痰よりDNAを抽出し、-30℃で保存した。 抽出したDNAのうち、100ng/ul以上の濃度かつClassIV,Vの腺癌5例、扁平上皮癌5例、さらに肺癌の存在が確認されないClass I,IIの症例5例、年齢56~94歳、男性/女性12/3を用いて48癌遺伝子のパネルを用いてAmplicon sequenceを行った。 結果、1:腺癌、扁平上皮癌でALK, KDR, PTEN, KRAS, FLT3, RB1, TP53, ABL1の8遺伝子9locusに共通する変異を見出した。2:癌症例10例、全症例15例でいずれも年齢と遺伝子変異数は正の相関を示すことを見出した。 結論:喀痰から NGSに耐えうるDNAの抽出が可能であり、多数例の解析により、発癌を予測できる遺伝子変異を検出する可能性を見出した。
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