研究課題
肝移植後長期経過した小児症例において、慢性の肝障害を来している症例の有無の検討とその中に慢性抗体関連拒絶と診断し得る症例があるかどうかを検討した。抗体スクリーニングで抗ドナー抗体陽性もしくは擬陽性の症例に対して抗HLA抗体シングル抗原同定検査を行うとともに、プロトコール肝生検を行った。肝生検組織像においては門脈域・中心静脈域・類洞間の線維化の程度の評価を行うとともに、免疫組織化学的染色(C4d、サイトケラチン7番、抗平滑筋抗体、CD34等)を行い、胆管障害の程度、肝内組織球の活性化の有無とその程度、類洞内皮細胞の障害の有無を詳細に検討した。肝生検における組織障害の程度と抗ドナー抗体値との関連性に関して評価を行った。肝移植後5年以上経過した症例で抗ドナー抗体陽性且つ肝生検が施行された18歳以下の症例25例において、C4d陽性症例は7例であり、その中でBanffの診断基準に基づく慢性抗体感染拒絶にあてはまる症例は5例(25%)であった。また、11例においては慢性拒絶もしくは早期慢性拒絶の所見を認めた。慢性抗体感染拒絶と診断し得た症例では中心静脈域間・類洞間の線維化を認めた。抗ドナー抗体陽性であるが慢性抗体関連拒絶の診断基準を満たさない症例と慢性抗体関連拒絶の症例の線維化の程度を比較すると、慢性抗体関連拒絶症例において線維化進行が確認された。原疾患が代謝性疾患症例である小児症例は予後が非常に良いといわれているが、一部の症例では肝移植直後に肝機能障害が出現する。その肝機能異常の原因を組織学的に検討した。原疾患が代謝性疾患で肝移植直後に肝機能障害を認めたため肝生検が行われた小児症例36例中、21例(58.3%)においてびまん性の脂肪変性を認めた。これらの症例のドナー肝では脂肪変性は軽度もしくは認めなかった。肝生検で拒絶が確認された症例は8例のみであった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Pathology International
巻: 70 ページ: -
10.1111/pin.12917
Hepatology Research
巻: 50 ページ: -
10.1111/hepr.13487
Liver Transplantation
巻: 26 ページ: 57-67
10.1002/lt.25649.