研究課題/領域番号 |
17K08758
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
星野 瞳 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特命助教 (90500710)
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研究分担者 |
小林 基弘 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00362137)
内村 健治 名古屋大学, 医学系研究科, 招へい教員 (20450835) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝臓 / 細胆管反応 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
肝癌の多くは、背景に慢性肝炎や肝硬変を伴っていることから、慢性的な肝傷害は、肝癌の発生において重要な役割を演じていると考えられている。劇症肝炎をはじめとする種々の肝疾患では、門脈域周辺に細胆管の増生、すなわち細胆管反応がみられるが、その発生分子メカニズムや病理学的意義は十分に解明されていない。本研究では、細胆管反応における硫酸化糖鎖の役割を解明することを目的としている。硫酸化糖鎖を発現した細胆管の分布と、背景病変との関連性を解析することによって、細胆管反応の発生分子メカニズムや発癌との関わりを明らかにし、細胆管反応の病理学的意義を明らかにする。細胆管反応の発生過程における硫酸化糖鎖の関与を調べるため、野生型マウス及び硫酸転移酵素遺伝子組換えマウスを用いて、2種類の肝傷害モデルマウスの作製を試みた。肝細胞傷害型モデルマウスでは、軽度な肝傷害しか誘導できず、観察された細胆管反応も軽微であった。胆管細胞傷害型モデルマウスでは、Diethyl 1,4-dihydro-2,4,6-trimethyl-3,5-pyridinedicarboxylate(DDC)の投与期間に比例して細胆管反応が高度になることを確認できたことから、硫酸転移酵素遺伝子組換えマウスを用いて胆管細胞傷害型モデルマウスを作製し、細胆管反応の定量化と病態解析を行なった。またヒト肝組織の標本を用いて、硫酸化糖鎖の発現パターンと背景病変との関わりを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
門脈域周辺の肝細胞を傷害する肝細胞傷害型モデルマウスの作製を野生型マウスを用いて行なったが、軽度な肝傷害しか誘導できず、観察された細胆管反応も軽微であった。一方、胆管を構成する胆管上皮細胞を傷害する胆管細胞傷害型モデルマウスの作製を野生型マウスを用いて行なった結果、細胆管反応を伴った肝傷害を誘発することができ、さらにDDCの投与期間に比例して細胆管反応が高度になることを確認した。しかしながら、硫酸化糖鎖に対する免疫組織染色を行なったところ、ヒト組織における細胆管反応でみられるパターンとは異なる染色結果を示した。同じ条件で硫酸転移酵素遺伝子組換えマウスを用いて胆管細胞傷害型モデルマウスを作製し、免疫組織染色により病態の解析を行なったが、野生型マウスと同様、ヒト組織における細胆管反応でみられるパターンとは異なる染色結果であった。ヒト組織における解析では、細胆管反応を伴った肝疾患の症例を用いて免疫組織染色を行ない、硫酸化糖鎖の発現パターン及び背景病変との関わりについて解析を進めている。またヒト組織及び細胞株を用いて、硫酸化糖鎖の修飾を受けるタンパク質の同定についても解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで胆管細胞傷害型モデルマウスを作製して細胆管反応の糖鎖解析を行なってきたが、ヒト組織でみられる細胆管反応とは異なる硫酸化糖鎖発現パターンを示した。この結果については、過去の論文で、マウスを用いた細胆管反応の系統追跡は、肝傷害モデルマウスの種類や肝傷害の程度などの影響を受けやすく、概してヒトの病態を模倣しないとの報告があることから、細胆管反応に関与する分子や間質成分の違いなど、ヒトとマウスの種間相違が影響しているものと考えられた。従って、今後はヒト組織及び細胞株を用いた解析を中心に研究を進めていく。また、これまでの研究結果から、硫酸化糖鎖の発現パターンが足場となるタンパク質の種類や局在によって影響を受ける可能性が示唆されたことから、細胞株を用いた遺伝子導入実験、免疫沈降、ウエスタンブロットといった分子生物学的実験を行ない、この可能性を検証する。
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