研究課題
今までの解析ではマクロファージと悪性リンパ腫細胞との細胞間相互作用にはCDM1やICAM-1が関与していると想定し、実験を行いましたが、解析の結果、これらの因子は細胞間相互作用における重要性は低いことがわかり、その結果を論文にまとめて投稿しました(Komohara Y et al J Clin Exp Hematop 2017)。今回は新たな細胞間相互作用に関わる因子を探索する目的でM-CSFRに注目し、解析を行いました。M-CSFRはマクロファージの分化、遊走に関わることは以前から知られており、最近では胎盤形成や乳癌の発癌にも関わると言われています。一方、悪性腫瘍においてはM-CSFRを介したシグナル伝達経路は乳癌や膠芽腫などの腫瘍細胞の増殖・浸潤に関わり、M-CSFRの発現は多くの悪性腫瘍では予後不良因子として知られています。血液系の悪性疾患においては急性骨髄性白血病やホジキンリンパ腫などでM-CSFRの過剰発現が報告されていますが、ATLLにおけるM-CSFRの発現の意義についてはまだ報告されていません。今回はM-CSFRの過剰発現をATLLで証明することができまして、M-CSFRシグナル伝達はATLLと細胞増殖と関わり、M-CSFR阻害剤はリンパ腫細胞のアポトーシスを誘導することもわかりました。ATLL細胞株であるATL-Tと80%の症例はM-CSFRのリガンドであるM-CSF及びIL-34を同時に発現することがわかりました。また、細胞培養実験ではマクロファージとリンパ腫細胞の共培養する実験系では、共培養によりマクロファージで発現するPD-L1,2の発現がM-CSFR阻害剤により抑制されることがわかりました。つまり、M-CSFRシグナル伝達はマクロファージとリンパ腫細胞の細胞間相互作用および腫瘍免疫に関わっていることが示唆されました。
2: おおむね順調に進展している
細胞間相互作用に関わる新因子に注目して解析を継続しています。
ATLLでの検討が完了したら他の悪性リンパ腫でも解析を行います。
最終年度になり、英文校正や論文投稿、国際学会参加などのための経費を確保したです。
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Journal of clinical and experimental hematopathology
巻: Vol. 58 No.4 ページ: 152-160
DOI:10.3960/jslrt.18034