研究課題/領域番号 |
17K08765
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
市戸 義久 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80452978)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 肝幹・前駆細胞 / 骨髄間葉系細胞 / 細胞移植 / Extracellular vesicles / 肝再生 |
研究実績の概要 |
申請者は、障害肝由来CD90陽性細胞をRetrorsine/部分肝切除(Ret/PH)モデルに脾臓経由で移植すると、ドナー細胞が細胞外小胞(Extracellular Vesicles: EVs)を分泌することで、内在性肝前駆細胞であるSmall Hepatocytes-like progenitor cells(SHPCs)の増殖が促進され、肝再生を促進することを報告した (Ichinohe et al, STEM CELLS 2017)。CD90は現在臨床応用が進んでいる骨髄間葉系細胞(Bone Marrow-derived mesenchymal cells: BM-MCs)のマーカーとしても知られる。そこでBM-MCsにも同様な肝再生促進効果があるか検討した。正常ラット大腿骨から骨髄液を採取し、培養皿に播種した。2週間培養したBM-MCsを、Ret/PHモデルに移植すると、コントロールに比べ内在性SHPCs clusterの数及び大きさが有意に増大した。次にBM-MCsの培養上清を超遠心で、沈殿したEVsの分画と上澄みのConditioned medium (CM)に分け、同様にRet/PHモデルに投与したところ、EVsを投与した場合のみ内在性SHPCsを増大させた。EVsに含まれる肝再生因子を同定するため、CD90陽性細胞とBM-MCsのEVsからmiRNAを抽出し、miRNAマイクロアレイで網羅的に解析し、共通因子として7種を抽出した。次にRealtime PCRにて発現量を確認し、4種に絞った。この4種のmiRNAのmimicを、肝前駆細胞である小型肝細胞(Small Hepatocyets; SH)に導入し、増殖能を検討したところ、2種のmiRNAがSHsの増殖を促進した。今後は増殖メカニズムの解析の他、BM-MCsに特異的な因子についても検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成29年度の研究実施計画では、 1. EVs内の肝再生因子の抽出、 2. in vitroにおける肝再生因子の導入による増殖促進効果の検討 により、肝再生因子を同定することであった。現在、EVsに含まれるmiRNAから肝前駆細胞の増殖を促進する因子を2つ同定することが出来たことから、本研究は着実に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は平成30年度の研究実施計画に則り、in vitroを中心に、 ① 抽出した2因子の増殖促進の分子メカニズムを解析する ② 他の肝再生因子、特にBM-MCsに特異的な因子を同定する。 ③ 類洞内皮細胞やKupffer細胞、Pit細胞を活性化するか、検討する。 以上の解析から同定した因子を、in vivo実験としてRet/PHモデルに投与し、内在性SHPCsを増大するか検討していく。また同時に肝硬変モデルに対する治療有効性についても検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究には候補因子の分子メカニズムの解析が必要であり、解析に必要な額を留保したため、次年度使用額が生じている。 次年度使用額は、受諾解析費用、試薬、及び実験動物や実験器具などの消耗品の購入に用いる。
|