研究課題/領域番号 |
17K08772
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐野 誠 日本大学, 医学部, 兼任講師 (70339323)
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研究分担者 |
宮入 伸一 日本大学, 薬学部, 教授 (50209855)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵癌 / インディルビン / リン酸化阻害剤 / CDK1/Cyclin B1 / Kras/ERK / SPAK/JNK / AKT / MMP |
研究実績の概要 |
浸潤性膵管癌は未だに難治性の悪性腫瘍の一つであり、新たな治療薬の開発が望まれている。当該研究者らは、多様なチロシンキナーゼ阻害活性を有するインディルビンに着目し、これまでにインディルビン誘導体のindirubin 3'-oxime(Indox)と5-methoxyindirubin 3'-oxime(5MeOIndox)が、膵癌細胞株に対してp-CDK1/Cyclin B1を抑制し、G2/Mアレストによる抗腫瘍効果を発揮することをin vitroならびに皮下移植モデルにおいて明らかにしてきた(Sano M, Ichimaru Y, Cancer Letters 397; 2017, 72-82)。また、浸潤性膵管癌を自然発症する遺伝子改変マウス(KPC-floxマウス)に対しても同様に、Indoxが膵癌細胞のp-CDK1/Cyclin B1を低下させ、増殖抑制することでKPC-floxマウスの生存率を高めること、またIndox投与群において腫瘍浸潤ならびに転移能が抑制されることを見出した。
当該年度においては、in vivoでの結果を踏まえてIndoxによる膵癌細胞の遊走・浸潤能への効果を詳細にin vitroの系で検討するとともに、Indoxの標的分子をリン酸化抗体アレイによって半網羅的に解析した。膵癌細胞はKPC-floxマウスの膵原発巣から新たに樹立した3種類の細胞株を用いた。その結果、IndoxはKPC-floxマウス由来膵癌細胞の遊走・浸潤を有意に抑制した。また、Indoxは同膵癌細胞株においてRAF/ERK、SPAK/JNK、AKT経路にある分子のリン酸化を阻害することで、MMPの発現を抑制し、腫瘍浸潤を低下させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度までに、膵癌の自然発症モデル(KPC-floxマウス)における膵癌細胞の脈管浸潤やリンパ節転移、遠隔転移がIndoxの投与により抑制されたことを受けて、KPC-floxマウス由来の膵癌細胞株を新たに樹立し、in vitroの遊走・浸潤アッセイにより、Indoxが膵癌細胞株の遊走・浸潤を抑制することを証明できた。また、IndoxがRAF/ERK、SPAK/JNK、AKTの三経路を同時に阻害することでMMPの発現を抑制するというメカニズムを今回新たに明らかにすることができた点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の主な研究推進方策として、以下の3項目を予定している。
1)インディルビン誘導体の水溶化により経口投与可能なインディルビン誘導体が開発出来たことから、KPC-floxマウスへの投与を開始する。 2)膵癌細胞におけるリン酸化抗体アレイにおいて、Indoxが炎症に関わる分子のリン酸化を阻害することが示唆されたことから、KPC-floxマウスにおけるIndoxの抗炎症作用について検討する。 3)KPC-floxマウスへのIndox投与群において、悪液質の改善傾向が見られたことから、より詳細な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の研究計画においては、膵癌モデルマウス(KPC-floxマウス)に対してインディルビン誘導体に加えて抗がん剤との併用療法を予定していたが、インディルビン誘導体単剤でも予想以上の生存期間延長が認められたことから、抗がん剤の併用を見送ったため。
次年度は引き続き、マウスの繁殖・交配、メンテナンス、ジェノタイピング、サンプリングならびに病理組織学的解析、フローサイトメーター 解析に伴う費用、またin vitro解析に関わる費用に使用する予定である。
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