研究実績の概要 |
浸潤性膵管癌は未だに難治性の悪性腫瘍の一つであり、新たな治療薬の開発が望まれている。当該研究者らは、多様なチロシンキナーゼ阻害活性を有するインディルビンに着目し、これまでにインディルビン誘導体のindirubin 3'-oxime(Indox)と5-methoxyindirubin 3'-oxime(5MeOIndox)が、膵癌細胞株に対してp-CDK1/Cyclin B1を抑制し、G2/Mアレストによる抗腫瘍効果を発揮することをin vitroならびに皮下移植モデルにおいて明らかにしてきた(Sano M, Ichimaru Y, Miyairi S: Cancer Letters 397; 2017, 72-82)。 また、浸潤性膵管癌を自然発症する遺伝子改変マウス(KPCマウス)に対しても、Indox投与群がコントロール投与群に比べてp-CDK1/Cyclin B1を低下させ癌細胞の増殖を抑制すること、また癌細胞の脈管浸潤やリンパ節転移、遠隔転移を抑制し、生存期間を有意に延長することを明らかにした。さらに、KPCマウス由来の膵癌細胞株を新たに樹立し、in vitroで遊走・浸潤アッセイを行いIndoxが膵癌細胞株の遊走・浸潤を有意に抑制すること、RAF/ERK、SAPK/JNK、AKT経路のリン酸化を阻害することで、MMPの発現を抑制し腫瘍浸潤を低下させることを新たに見出し報告した(Ichimaru Y, Sano M, Miyairi S: Translational Oncology, 2019; 12:1574-1582)。 また一方で、インディルビン誘導体の水溶化に成功し、経口投与可能なインディルビン誘導体を開発することができたことから,膵癌細胞株のアログラフトモデルと自然発症モデル(KPCマウス)に対して同インディルビン誘導体を経口投与し、有意な抗腫瘍効果が得られている。これまでのin vivoとin vitroの実験結果を合わせて英文論文として投稿を予定している。
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