研究課題
我々はFGF1がFGF受容体のみならずインテグリンとも結合することをこれまでに明らかにしており、この複合体形成ががんの浸潤転移において重要な働きを有すると考えている。本年度は種々の乳癌細胞株を用い、細胞の遊走や浸潤におけるFGFとインテグリンの結合が及ぼす影響について解析をおこなった。a) 研究の主要な材料として成長因子を組換え体として発現・精製する必要があり、研究開始にあたり。野生型FGF1およびFGF2、そしてインテグリンに結合できないFGF1およびFGF2の変異体を組換えタンパク質として大腸菌に発現させ精製した。実験の質にかかわる部分であり十分な時間を割いておこなった。b) 正常乳腺細胞にTGF-beta1などで上皮間葉転換 (EMT) を誘発させ腺房構造が乱れた時のFGFの作用とインテグリンの役割を解析するために、まずTGF-beta1とFGFの量比の検討をおこなった。c)インテグリンとFGFの癌細胞に対する役割を解析するために、乳癌細胞株、MDA-MB-231、MCF7、ZR-75-30、SK-BR-3細胞を用いて、これらの細胞が野生型FGFおよび変異型FGFにたいしてどのように反応するか観察した。初年度は平面培養系にてFGFに対する形態的変化の解析と、シグナル伝達についての生化学的解析をおこなった。またこれら細胞を用いて細胞遊走能や浸潤能について解析をおこなったところ、FGFとインテグリンの結合が乳癌細胞の遊走や浸潤に重要であることが示唆された。
3: やや遅れている
研究分担者1名が部署移動に伴い研究遂行が困難となり、分担分の調整をする必要が生じた。また研究代表者の研究室は開設間もなく、本研究課題の開始にともない研究環境の整備を進めており一部の実験のセットアップが滞っている。FGF1およびFGF2とインテグリンの相互作用について乳癌細胞株における役割を中心に研究を進めた。初年度は主要な材料である組換えタンパク質の精製や、細胞の培養条件、各成長因子による細胞刺激の検討が中心であり研究遂行上大きな問題は生じていない。
研究分担者1名の減少分は研究代表者および2名の分担者で適宜負担する予定である。前年度に解析が不十分であった正常乳腺上皮細胞を用いた3次元培養に関して解析を進める。
年度途中に研究分担者1名が部署移動に伴い研究遂行が困難となったことより、予定より研究費の使用が減少した。また一部の実験のセットアップが滞っており、使用予定の消耗品の購入が翌年度になった。
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