研究課題/領域番号 |
17K08777
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
坂本 修一 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 主任研究員 (60346070)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌転移 / 小細胞肺癌 / 同所移植モデル |
研究実績の概要 |
平成29年度は主に「これまでに得た転移関連因子候補のin vivo評価と機能解析」を実施した。研究代表者らはこれまでの研究の過程で、「DMS273由来の高転移性亜株と親株の発現プロファイル比較」から膜タンパク質2種を、自然転移モデルでの「同所移植巣と骨転移巣・副腎転移巣の腫瘍細胞間の発現比較」により膜タンパク質1種とsmall GTPaseタンパク質1種を、転移関連因子候補として見出していた。これら4種の候補因子について、実際に転移に影響するかを検討するために、それぞれに対応するshRNAを作成し、高転移性亜株に導入して遺伝子ノックダウン株4種を樹立した。これらのノックダウン株をヌードマウス肺に移植して自然転移モデルを作成したところ、膜タンパク質2種についてはノックダウンによる遠隔転移形成頻度の低下が認められた。次にこれら2種の膜タンパク質について、親株にそれぞれcDNAを導入して強制発現株を樹立し、自然転移モデルを作成したところ、遠隔転移形成頻度の上昇がみられた。さらにこれらの強制発現株について、ヌードマウスの尾静脈への注入による実験転移モデルを作成したところ、やはり肺転移形成頻度が上昇した。一方、ヌードマウス皮下への移植実験による腫瘍形成実験では、in vivoでの腫瘍増殖能には変化がなく、in vitroでも増殖速度や足場非依存性増殖能などには影響は見られなかった。以上の結果から、4種の候補因子のうちの膜タンパク質2種はそれぞれ本モデルにおいて腫瘍増殖に影響せずに転移巣形成を促進する因子であると考えられた。 平成29年度研究実施計画に記載した「脳転移巣と同所移植巣の遺伝子発現比較」については、今年度は同所移植モデルの脳転移巣サンプルが十分量回収できなかった為、実施出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の交付申請書の平成29年度研究実施計画に記載した内容のうち、「これまでに得た転移関連因子候補のin vivo評価と機能解析」については、4種の転移関連因子候補のうちの2種の膜タンパク質が転移を促進する因子であることを明らかにすることが出来ており、これについては計画通りの進捗状況といえる。一方、「脳転移巣と同所移植巣の遺伝子発現比較」については必要量の脳転移巣サンプルを回収出来なかった為、発現比較実験を実施できなかった。以上の進捗状況から、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に2種の膜タンパク質が転移を促進することを確認できたので、両膜タンパク質についての解析をすすめる。ノックダウン株あるいは強制発現細胞について、細胞外基質への接着性やサイトカイン類への応答性、血管内皮細胞等との共培養系での増殖性等を検討し、転移促進のメカニズムを解析する。それらに加えて、他のヒト小細胞肺癌細胞株(NCI-H69など)でもノックダウン株あるいは強制発現細胞を作成し、転移への寄与を確認する。 また、平成30年度からはゲノムワイドshRNAライブラリーを用いたin vivo機能スクリーニングの系を立ち上げる。まず、Cellecta社製shRNAライブラリーレンチウイルスを高転移性亜株に感染させる。shRNA導入細胞を選択培地中で20代程度継代し、in vitroでの細胞増殖を抑制するshRNAを排除した細胞集団(A)を作成し、それをヌードマウスの脳実質に移植する。形成された脳腫瘍巣と(A)から各々RNAを回収し、含まれるshRNA配列を次世代シーケンサーで解析する。この実験により、脳転移形成の最終過程である脳への生着に重要な遺伝子を同定する。
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