研究課題
昨年度までに、2種の膜タンパク質がヒト小細胞肺がん細胞株DMS273の転移能を促進することを見出していた。本年度は、そのうちの1種(以下Xとする)についてさらに検討を行い以下の結果を得た。(1)DMS273細胞でのXのノックダウン株は、同所移植モデルにおいても転移形成能が低下していた。一方同所移植巣の大きさはコントロール株と違いはなかった。(2)Xは、DMS273細胞においてInterferon類によって強く発現誘導された。(3)別のヒト小細胞肺がん細胞株でのXの過剰発現株を作成し、尾静脈注入における遠隔転移形成を検討した。その結果、Xはその細胞株でも転移能を促進することが分かった。(4)タグを付加したXをDMS273細胞で過剰発現させ、タグに対する抗体で免疫沈降して、共沈してくるタンパク質を質量分析法により同定した。その結果から、この細胞において膜タンパク質YがXに結合していると考えられた。現在このYの転移能への影響を検討中である。また、脳への転移機構の解析のために、新たに免疫不全マウスへの左心室注入モデルを検討したところ、尾静脈注入モデルよりも高頻度に様々な臓器への転移形成が見られることがわかった。この左心室注入モデルで、5種のヒト遺伝子のそれぞれの過剰発現株を混合して接種し、形成された転移巣での5遺伝子の発現量をリアルタイムRT-PCRで測定したところ、同所移植モデルで転移形成を促進した遺伝子の発現が高くなっていた。この系により複数の遺伝子についてまとめて転移促進能を評価することが可能と考えられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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