研究課題/領域番号 |
17K08779
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
田中 宏樹 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70596155)
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研究分担者 |
奥田 勝博 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00389115)
浅利 優 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (40360979)
清水 惠子 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90312462)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / FGF9 |
研究実績の概要 |
肝臓と骨格筋は生体内において食事由来のエネルギーを消費する二大臓器であり、両臓器の代謝バランスの変化は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進展に大きな影響を及ぼすものと考えられる。近年、NAFLDの進展と加齢や運動不足による骨格筋萎縮の関連が注目されているが、肝・骨格筋軸に着目した詳細な分子機構は明らかにされていない。本研究ではマウス脂肪肝・廃用性筋萎縮モデルから採取した肝、骨格筋組織について網羅的遺伝子発現解析を行い、NAFLDの進展に関連する分子動態を明らかにすることを目的とした。 マウスに高脂肪食を与えて誘導した脂肪肝モデルを、尾懸垂飼育装置を用いて一週間飼育し肝、ヒラメ筋、血液を採取した。また、コントロールとして同脂肪肝モデルを通常飼育した個体から同サンプルを採取した。それぞれの臓器について組織学的評価を行なうとともにRNAを採取し、RNAシークエンシングによる網羅的遺伝子発現解析を行った。 尾懸垂飼育した脂肪肝モデルマウスにおいて、ヒラメ筋繊維の萎縮、肝組織における脂肪の増加、血清トランスアミナーゼ活性の上昇が観察された。網羅的遺伝子発現解析では、肝組織における増殖関連転写因子の発現低下、ヒラメ筋組織における筋繊維構成蛋白質、脂肪酸代謝酵素、組織修復関連増殖因子であるFGF9の発現低下が認められた。 これらの結果は尾懸垂飼育により廃用性筋萎縮が誘導され、その影響によりヒラメ筋組織における脂肪酸の利用が低下し、肝組織への蓄積が亢進したことを示している。また、ヒラメ筋の廃用性筋萎縮により筋組織から分泌されるFGF9が低下し、肝病変の進行に関連していると考えられた。廃用性筋萎縮は脂肪酸代謝の低下による代謝バランスの破綻をもたらし、さらにFGF9の分泌低下による肝再生抑制という内分泌機能の異常によってNAFLDの病態を修飾していることが示唆された。
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