研究実績の概要 |
Processing body (P-body, PB)は細胞質に存在するRNA顆粒(mRNA-蛋白質複合体)のひとつで、mRNA分解などの翻訳制御機能をもつ。これまでに、寄生原虫Trypanosoma cruzi (T. cruzi)感染の初期に宿主PBの形成が誘導されることを見出した。そこで本研究では、T. cruzi感染初期の宿主mRNA翻訳制御にPBがどのように関わっているかを明らかにすることを目的とした実験を行なった。 まず、PBの必須構成因子であるEDC4をノックアウトしたPB形成能欠損細胞 (EDC4KO)を作製し、T. cruzi感染初期のトランスクリプトーム解析を行ったところ、EDC4KOではコントロールと比較して、炎症性サイトカイン遺伝子の発現や自然免疫関連シグナル経路の活性化が亢進することがわかった。また EDC4KOに EDC4をレスキューした細胞を用いて、T. cruzi感染によるサイトカイン産生がPB形成依存的に抑制されることを確認した。これらの結果から、原虫がPB形成促進により宿主の自然免疫応答を負に制御して感染を成立させている可能性が示された。 続いて、T. cruzi感染でPBに局在してくるmRNAを網羅的に同定するため、感染細胞ライセートから遠心分画法によりPBを含むRNA顆粒の分画を行なった。そして、EDC4, 4E-T, Lsm14AといったPB形成に必須の蛋白質が得られた画分に濃縮されてくること、その画分からcDNAライブラリ作製に適した純度のRNAを得られることを確認できた。今後このRNAからcDNAライブラリを調整し、シーケンス解析を行っていく予定である。
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