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2017 年度 実施状況報告書

大脳サイトメガロウイルス感染による血液脳関門破綻の新たな機序の解明と治療法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 17K08784
研究機関浜松医科大学

研究代表者

河崎 秀陽  浜松医科大学, 医学部, 准教授 (90397381)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードサイトメガロウイルス / 血液脳関門 / 微粒子 / ナノスーツ法
研究実績の概要

サイトメガロウイルス(CMV)は胎内感染によって小頭症などの重篤な中枢神経障害を引き起こす。ダウン症に匹敵する大きな先天異常である。成人になるまで約60%~90%の人がCMVに感染するが、健常者では重篤な症状を呈することは少ない。しかし近年、抗CMV抗体高値を示す高齢者優位に認知症発症率の高さが指摘されるようになり注目を集めている。
申請者はマウスモデルを使ってCMV大脳感染機序を解明してきた。2015年にはCMV感染による血液脳関門(BBB)破綻現象をin vivoで初めて観察しAm J Pathol誌に発表した。その中でBBB破綻がCMV中枢神経障害の重要な病理機序であることを示した。本申請ではCMV慢性持続感染がBBB脆弱性に影響を及ぼし認知症発症に関わるとの仮説をたてた。今回はCMV感染によるBBB破綻機序の分子学的解析と認知症を含めたCMV誘発性神経疾患の予防・治療法につなげることを目的とする。
今回の申請ではCMVによるBBBの破綻機序をより詳しく検索する予定であった。今年度はin vitro BBB モデルを利用したCMV感染BBB破綻機序の解析を計画していた。当初はBBB再構成モデルとなるマウスBBBキットを提供会社から購入できる予定であったが、開発が遅れ購入することができなかった。現在は正確な実験を保証するためのウイルス微粒子のカウント法について開発中であり、微量液滴を用いたCMV粒子のカウントや観察を試みている。またマウス感染脳に対して経時的な脳血管壁の立体構造変化を走査型電子顕微鏡(ナノスーツ法)での観察を試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今回の申請ではCMVによるBBBの破綻機序をより詳しく検索するために、今年度はin vitro BBB モデルを利用したCMV感染BBB破綻機序の解析を計画していた。当初BBB再構成モデルであるマウスBBBキットが提供会社から購入できる予定であったが、会社の開発が遅れており購入することができなかった。マウスサイトメガロウイルスはマウスの細胞でしか感染増殖しないため、他の動物種では代用することができない。また予算申請書で書いたヒトiPS細胞を使用し、同一細胞由来のBBBを3次元的にin vitroで再現することが成功したとの情報も現時点での実現性が難しいことが最近話題となった。慢性CMV感染モデルマウスにおけるBBB脆弱性の検討をするために慢性感染モデルの作成を試みている。その中で来年度はCyclophilin A(CyPA) knockout mouseを使用する計画である。今年度はCyPA knockout mouseのホモの作成がうまくいかず、こちらも進捗が滞っている状態である。これらの現状を踏まえ現在は正確な実験を保証するためのウイルス微粒子のカウント法についても開発中であり、微量液滴を用いたCMV粒子のカウントや観察を試みている。またマウス感染脳に対して経時的な脳血管壁の立体構造変化を走査型電子顕微鏡(ナノスーツ法)での観察を試みている。

今後の研究の推進方策

当初BBB再構成モデルであるマウスBBBキットが提供会社から購入できる予定であったが、会社の開発が遅れており購入することができていない。マウスサイトメガロウイルスはマウスの細胞でしか感染増殖しないため、他の動物種では代用することができない。今後もin vitroのマウスBBBモデルの購入は難しいと考えられる。そのため実施期間においてin vivoの実験を中心として実験モデルの再構築を現在策定中である。CyPAのknockout mouseのbreedingによるホモ作成がうまくいかない可能性も想定し、今後はマウスサイトメガロウイルスが血管内腔に付着・侵入・BBBの構造変化が現れるまでの経時的変化を、凍結切片やパラフィン切片を用いたナノスーツ法の観察をしていく予定である。ナノスーツ法とは高真空下でも生命を保護できる「生体適合性プラズマ重合膜」で、生きたまま、濡れたままの状態で生物の高解像度な電子顕微鏡観察することができる。このナノスーツ法を利用することで新たな知見を得られることが期待される。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Pathogenesis of developmental anomalies of the central nervous system induced by congenital cytomegalovirus infection2017

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Hideya、Kosugi Isao、Meguro Shiori、Iwashita Toshihide
    • 雑誌名

      Pathology International

      巻: 67 ページ: 72~82

    • DOI

      10.1111/pin.12502

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phenotypic characterization of perivascular myoid cell neoplasms, using myosin 1B, a newly identified human pericyte marker2017

    • 著者名/発表者名
      Meguro Shiori、Akamatsu Taisuke、Matsushima Sayomi、Kosugi Isao、Kawasaki Hideya、Arai Yoshifumi、Baba Satoshi、Tsuchida Takashi、Shido Yoji、Suda Takafumi、Iwashita Toshihide
    • 雑誌名

      Human Pathology

      巻: 62 ページ: 187~198

    • DOI

      10.1016/j.humpath.2016.12.024

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Evaluation of epigenetic inactivation of vascular endothelial growth factor receptors in head and neck squamous cell carcinoma2017

    • 著者名/発表者名
      Misawa Yuki、Misawa Kiyoshi、Kawasaki Hideya、Imai Atsushi、Mochizuki Daiki、Ishikawa Ryuji、Endo Shiori、Mima Masato、Kanazawa Takeharu、Iwashita Toshihide、Mineta Hiroyuki
    • 雑誌名

      Tumor Biology

      巻: 39 ページ: -

    • DOI

      doi: 10.1177/1010428317711657

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Epigenetic silencing of SALL3 is an independent predictor of poor survival in head and neck cancer2017

    • 著者名/発表者名
      Misawa Kiyoshi、Mochizuki Daiki、Imai Atsushi、Misawa Yuki、Endo Shiori、Mima Masato、Kawasaki Hideya、Carey Thomas E.、Kanazawa Takeharu
    • 雑誌名

      Clinical Epigenetics

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      doi: 10.1186/s13148-017-0363-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A modified ‘NanoSuit?’ preserves wet samples in high vacuum: direct observations on cells and tissues in field-emission scanning electron microscopy2017

    • 著者名/発表者名
      Takaku Yasuharu、Suzuki Hiroshi、Kawasaki Hideya、Ohta Isao、Ishii Daisuke、Hirakawa Satoshi、Tsutsui Takami、Matsumoto Haruko、Takehara Sayuri、Nakane Chinatsu、Sakaida Kana、Suzuki Chiaki、Muranaka Yoshinori、Kikuchi Hirotoshi、Konno Hiroyuki、Shimomura Masatsugu、Hariyama Takahiko
    • 雑誌名

      Royal Society Open Science

      巻: 4 ページ: 160887~160887

    • DOI

      doi: 10.1098/rsos.160887

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A thin polymer membrane 'NanoSuit' allows living organisms to survive in the harsh conditions of electron microscopy2017

    • 著者名/発表者名
      Hariyama Takahiko、Sakaida Kana、Matsumoto Haruko、Tsutsui Takumi、Suzuki Hiroshi、Kawasaki Hideya、Shimomura Masatsugu、Takaku Yasuharu
    • 雑誌名

      -

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1117/12.2260812

  • [学会発表] NanoSuit法を利用した高精度な迅速ナノ粒子定量・同定法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      河崎秀陽、小杉伊三夫、目黒史織、針山孝彦、岩下寿秀
    • 学会等名
      日本病理学会
  • [産業財産権] 電子顕微鏡によるナノ粒子の直接的な同定・定量のための検出キットおよび方2017

    • 発明者名
      河崎秀陽、針山孝彦
    • 権利者名
      浜松医科大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 公開番号
      特開2017-201289

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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