研究課題
サイトメガロウイルス(CMV)は胎内感染によって小頭症などの重篤な中枢神経障害を引き起こす。ダウン症に匹敵する大きな先天異常である。成人になるまで約 60%から90%の人がCMVに感染するが、健常者では重篤な症状を呈することは少ない。しかし近年、抗CMV抗体高値を示す高齢者優位に認知症発症率の高さが指摘されるようになり注目を集めている。申請者はマウスモデルを使ってCMV大脳感染機序を解明してきた。2015年にはCMV感染による血液脳関門(BBB)破綻現象をin vivoで初めて観察しAm J Pathol誌に 発表した。その中でBBB破綻がCMV中枢神経障害の重要な病理機序であることを示した。本申請ではCMV慢性持続感染がBBB脆弱性に影響を及ぼし認知症発症に関わ るとの仮説をたてた。今回はCMV感染によるBBB破綻機序の分子学的解析と認知症を含めたCMV誘発性神経疾患の予防・治療法につなげることを目的とする。今回の申請ではCMVによるBBBの破綻機序をより詳しく検索する予定であった。今年度もin vitro BBB モデルを利用したCMV感染BBB破綻機序の解析を計画して いた。当初はBBB再構成モデルとなるマウスBBBキットを提供会社から購入できる予定であったが、開発が遅れ購入することができなかった。現在は正確な実験を保証するためのウイルス微粒子のカウント法について開発中であり、微量液滴を用いたCMV粒子のカウントや観察を試みている。またマウス感染脳に対して経時的な脳血管壁の立体構造変化を走査型電子顕微鏡(ナノスーツ法)での観察を試みている。今年度は新型コロナの影響とBBBマウスモデルの開発が進んでいないことなどから研究の発展はあまりみられなかった。
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