研究課題/領域番号 |
17K08785
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
長久保 大輔 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (10368293)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / ケモカイン / CCL28 |
研究実績の概要 |
くしゃみ、鼻水、鼻づまりを主症状とするアレルギー性鼻炎は、先進国を中心に増加する一方で、治療にはそれら症状改善のための対症療法が主として行われている。そのため、予防法や根本的治療法の開発が強く望まれている。アレルギー性鼻炎では、T細胞や好酸球、形質細胞など、種々の免疫細胞が時系列に沿って鼻粘膜に動員され、それらが複雑に相互作用することで病態が形成される。しかし、免疫細胞の鼻粘膜浸潤の分子機構の詳細は明らかではなかった。本研究では、細胞動態制御による新規の予防法や治療法の創出を目指し、アレルギー性鼻炎の病態形成に関わる免疫細胞の鼻粘膜浸潤の分子機構を解明することを目的とした。 予備検討でアレルギー性鼻炎への関わりが予想されていた細胞走化性因子ケモカインCCL28について、その欠損マウスのアレルギー性鼻炎モデルを作製し、機能解析を行った。その結果、CCL28欠損マウスでは野生型と比較して、くしゃみの頻度が有意に減少し、鼻炎症状が緩和された。CCL28は、受容体CCR3とCCR10を介して標的細胞に作用する。そこで、鼻粘膜に動員される細胞群の解析を行なったところ、CCL28の受容体を発現するCD4陽性エフェクター/メモリーT細胞、好酸球、IgA陽性形質細胞の鼻粘膜浸潤が有意に抑制されることが明らかになった。一方、CCL28欠損マウスの鼻腔にCCL28タンパク質を添加すると、鼻炎時の細胞浸潤が一部回復した。また、ヒトのアレルギー性鼻炎患者鼻腔組織を用いた解析からは、ヒト鼻粘膜においてもアレルギー性鼻炎によりCCL28が発現上昇する傾向が認められたことから、CCL28による免疫細胞の鼻粘膜浸潤誘導機構は、ヒトでも同様に働いている可能性が考えられた。これらの解析から、CCL28がアレルギー性鼻炎制御の標的となる候補分子である可能性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレルギー性鼻炎の病態形成に関わるケモカインに関しては、野生型マウスで作製したアレルギー性鼻炎モデルの解析から、CCL28の発現が、鼻炎の誘導で鼻粘膜に上昇することを見出していた(既報)。そこで、CCL28の機能的意義について詳細に解析するためにCCL28欠損マウスを用いてアレルギー性鼻炎モデルを作製して解析を行った。これらの解析から、CCL28はアレルギー性鼻炎の病態に深く関係する細胞群の鼻粘膜浸潤の誘導を行なっていることが明らかとなり、その結果、CCL28はアレルギー性鼻炎の症状や病態形成に重要な役割を担っていることが示唆された。これらの成果を踏まえて、現在までのところ、当初の研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アレルギー性鼻炎におけるCCL28の標的細胞として平成29年度に見出したCD4陽性エフェクター/メモリーT細胞、好酸球、およびIgA陽性形質細胞に関して、引き続き、鼻粘膜浸潤機構の詳細な解析をin vitroおよび、in vivoの実験系により実施する。また、免疫抑制に重要な制御性T細胞や、アレルギー性鼻炎の即時相反応で重要なIgE産生形質細胞においては、CCR10を発現することが予想されるため、CCL28の鼻粘膜における標的細胞である可能性が考えられる。さらに、平成29年度に行った解析からは、CCL28の標的細胞には、新たに好塩基球が含まれる可能性についても得ることができた。そこで、鼻粘膜におけるCCL28の新たな標的細胞を探索し、それら細胞の時系列に沿った鼻粘膜浸潤機構の詳細について解析する。また、鼻粘膜におけるCCL28発現細胞の特定や、発現誘導機構についてはまだ詳しく解析が行われていない。そこで、それら検討を免疫組織染色やCCL28プロモーターの解析により行い、標的細胞の時系列に沿った鼻粘膜浸潤への影響についても解析する。これらを通じて、CCL28のアレルギー性鼻炎の病態形成における関与をより詳細に解析する予定である。
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