研究課題
蛋白質のユビキチン化はユビキチン活性化酵素、ユビキチン連結酵素、ユビキチンリガーゼの連鎖的な酵素反応によって起こり、基質蛋白質にユビキチンが共有結合される。多くの場合、ユビキチン化された蛋白質はプロテアソームによって認識されて分解されるが、分解以外にも多様な様式で蛋白質の機能を制御することが明らかになった。ユビキチン修飾系は発生や増殖などの生理機能、また、がんや神経変性疾患といった種々の疾患に関わることがよく知られているが、細菌感染における役割は不明であった。本研究では、細菌感染に関わる宿主のユビキチン修飾システム機能解明を目指している。特に、ユビキチン自身の翻訳後修飾による感染細胞内の細胞応答について解析を行った。我々は、腸管病原性大腸菌の感染細胞において、ユビキチン自身が翻訳後修飾(脱アミド化)を受けることを見出した。脱アミド化を受けたユビキチンの機能を明らかにするために、脱ユビキチン化型ユビキチンを発現する酵母株を作製し、脱ユビキチン化による細胞内ユビキチン修飾系の異常を調べた。まず、酵母の内で発現している4種類のユビキチン遺伝子をすべて脱アミド型ユビキチンに置換した酵母株を樹立した。脱アミド型ユビキチンを発現する酵母株は増殖に影響はなかった。次に細胞抽出液から各ユビキチン鎖の量を質量分析方法で定量した。その結果、K29鎖が脱アミド化で有意に減少していたが、他のユビキチン鎖に関しては、堅調な変化はみられなかった。細菌感染において重要なユビキチンリガーゼが形成するユビキチン鎖を調べた結果、ユビキチン差の形成能には差がなかった。しかし、脱アミド化型ユビキチン鎖はユビキチン結合蛋白質との結合能に異常があることを見出した。この結果、感染応答に重要なシグナル経路が活性化されず、感染拡大につながると考えられる。
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