研究実績の概要 |
糖の過剰摂取が脈絡叢上皮細胞を介する糖の脳室内への輸送動態を変化させ、海馬を含む脳室周囲組織に傷害を与え、認知症増悪に寄与する、との仮説を立て、この研究1年目は、脈絡叢とその周囲の海馬を含む脳室周囲領域における種々の糖関連物質の輸送体の局在の検討を行った。 我々は既に、平成26年に果糖の輸送体であるglucose transporter 5 (GLUT5)が脈絡叢上皮細胞に局在すること、平成28年にはGLUT8が脈絡叢上皮細胞に局在することを報告していたが、今回、そのGLUT8が脳室周囲領域のアストロサイトやミクログリアの細胞質に局在することを報告できた(Neurosci Lett, 636, 90-94, 2017)。さらに、果糖は細胞内で代謝されて尿酸を生じることが知られており、果糖の脳内の細胞への輸送を評価するには尿酸の輸送体の局在の評価も必須であるため、その検討を行ったところ、近年になって尿酸の輸送体であることが判明してきたGLUT9が脈絡叢上皮細胞の脳室側の細胞膜に局在すること、そして、代表的な尿酸の輸送体であるurate transporter 1 (URAT1)が脈絡叢上皮細胞の基底側の細胞膜に局在することを報告できた(Neurosci Lett 659, 99-103, 2017)。GLUT9とURAT1が脈絡叢上皮細胞の対極の細胞膜に存在していたことは、腎尿細管上皮細胞における両輸送体の対極性と類似し、URAT1側からGLUT9側への輸送(脳内から脳室側への輸送)を示唆しており興味深い結果であった。脈絡叢上皮細胞における GLUT5, GLUT8, GLUT9, URAT1の局在は、脳室を介して果糖やその代謝産物の尿酸が脳内の細胞において何らかの役割を担っていることを示唆し、その解明も重要課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
果糖の輸送体であるGLUT8が脳室周囲領域のアストロサイトやミクログリアの細胞質に局在することを報告し(Neurosci Lett, 636, 90-94, 2017)、さらに、果糖の細胞内代謝物質である尿酸の輸送体であるGLUT9とURAT1が脈絡叢上皮細胞の、それぞれ脳室側と基底側の細胞膜に局在することを報告した(Neurosci Lett 659, 99-103, 2017)。また、代表的なブドウ糖の輸送体であるGLUT1が脳毛細血管内皮細胞に局在することは有名であるが、現在、上記以外のブドウ糖の輸送体の脳内局在についての知見も得だしている。
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