研究実績の概要 |
我々は、これまで、糖の過剰摂取が脈絡叢上皮細胞を介する糖の脳室内への輸送動態を変化させ、海馬を含む脳実質周囲組織に傷害を与え、認知症増悪に寄与する、との仮説を立て研究を行ってきている。脈絡叢とその周囲の海馬を含む脳室周囲領域における種々の糖関連物質の輸送体の局在を検討を行った結果、果糖の輸送体であるglucose transporter 5 (GLUT5)が脈絡叢上皮細胞に局在すること(Neuroscience 260, 149-157, 2014)、GLUT8が脈絡叢上皮細胞に局在すること(Histochem Cell biol 146, 231-236, 2016)、そして、そのGLUT8が脳室周囲領域のアストロサイトやミクログリアの細胞質に局在することを報告してきた(Neurosci Lett 636, 90-94, 2017)。さらに、果糖は細胞内で代謝されて尿酸を生じることから、その尿酸の輸送体の局在を評価したところ、近年になって尿酸の輸送体であることが判明してきたGLUT9が脈絡叢上皮細胞の脳室側の細胞膜に局在することと、代表的な尿酸の輸送体であるurate transporter 1 (URAT1)が脈絡叢上皮細胞の基底側の細胞膜に局在することを報告した(Neurosci Lett 659, 99-103, 2017)。また、最近、骨で取り囲まれている脊髄での脳室周囲領域観察のために、非脱灰標本における染色方法(川本法)を脊髄で確立させた(Miscrosc Res Tech 81, 1318-1324, 2018)。さらに、現在、SGLUT2に関する知見が確実に明らかになってきており、論文作成中である。また、上記輸送体以外の輸送体の脳内における新たな知見も見出しており、平成31年度中における完成を目指している。
|