研究課題/領域番号 |
17K08791
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岩渕 和也 北里大学, 医学部, 教授 (20184898)
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研究分担者 |
佐藤 雅 北里大学, 医学部, 講師 (40611843)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NKT細胞 / CD1d / 抗原提示細胞 / 実験的自己免疫性心筋炎 / 抗炎症性作用 / NKT細胞リガンド / 疾患モデル / マクロファージ |
研究実績の概要 |
H29年度、実験的自己免疫性心筋炎(EAMC)においてNKT細胞リガンド(α-galactosylceramide; α-GC)を免疫時に投与すると心筋炎発症後の線維化が抑制されることを示した。H30年度もこの知見の再現性を確認する目的で実験を繰り返し、心臓におけるiNKT細胞はじめとする各種免疫担当細胞の動態と機能について解析した。その結果、①iNKT細胞数(個/g tissue)が誘導4週間後にピークとなること、②iNKT細胞にα-GCを提示する可能性が高いマクロファージ(Mφ)は感作時から漸増するパターンとiNKT細胞がピーク時にやはり同様にピークとなるパターンの2つがこれまで示された。一方、CD1dの発現がMφより低い樹状細胞・Ly6C+単球なども感作後に数・割合などが増加する傾向を示すことが再現された。さらに、サイトカインや炎症関連遺伝子産物の発現に関しては、①iNKT細胞に対する走化性因子(ケモカイン)であるcxcl16がiNKT細胞のピーク以前に高くなり、また同様に②Mφに作用するccl2の発現増強もMφ動態に適合していた。免疫制御作用を有するil10の発現についてはiNKT細胞のピークと完全に一致した1回目の実験とは合致しなかったが、1週目で増加を認めたのち4週間後でもプラトーの発現を示す結果が得られた。心臓における線維化の抑制と遺伝子発現との関連では、4週間後のαsma(smooth muscle actin)やコラーゲン遺伝子(col1a1)、tgfβが低く、その時期にiTCR Vα鎖が高いという逆相関の結果を示し、iNKT細胞活性化と繊維化抑制の関連を示唆するものであった。iNKT細胞のbeneficialな効果を示すために、新しく学外よりTraj18-/- (BALB/c背景; iNKT細胞欠損)マウスの導入(動物実験計画書の変更とともに)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、C57BL/6(B6)背景の脂肪細胞・マクロファージ・樹状細胞などの細胞系譜特異的cd1d1コンディショナルノックアウト(conditional KO; cKO)マウスを用いて、心臓におけるiNKT細胞への抗原提示に関わる主たる細胞の同定を行うことを計画していた。しかしながらWT B6での心筋炎発症マウスも期間内に作製出来なかった。B6でのEAMCのモデルの樹立、しかもヒト心筋ミオシン重鎖ペプチドによらない新規の抗原を用いることを目指し、心筋特異的タンパクであるcardiac troponin I3(TNNI3)とcardiac troponin (TNNT2)を標的としてI-A(b)結合モチーフを有するそれぞれの候補ペプチドを決定した(高知大学医学部免疫学宇高恵子教授とNEC山下慶子博士による)。新年度から感作実験が始まっているが、H30年度内にWT B6マウスで誘導を確認し、新年度からはcKOでの感作実験が行われていなければならず、この面では(かなり)遅れているという評価が妥当と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き心臓、特にEAMCにおけるiNKT細胞の抗炎症作用とそれを支持するiNKT細胞へのリガンド提示細胞としての心Mφの役割の重要性についての研究をまとめ(BALB/c背景の実験について;下記の項目を含む)、年度内に論文投稿することを目標にする。H29, 30の結果からiNKT細胞への抗原提示細胞としてMφの重要性が認識されているので、この確認のため、①BALB/cマウスにおいてクロドロン酸処理によるMφ除去を組み合わせたEAMC誘導を行い、除去によって重症化するかどうかをまず早期に検討する。②B6マウスでのEAMCモデルを確立出来れば、すでに育種にて作出したLysM-Cre x CD1d1fl/flマウスとCD11c-Cre x CD1d1fl/flマウスでの結果を統合し、iNKT細胞活性化における心Mφの役割の優位性を明らかにする。この実験に関してはヒトcardiac troponin(TNNI3, TNNT2)ペプチドを用いた感作を様々な条件で行う。③iNKT細胞の活性化がEAMC軽症化に大きな役割を果たしていることをiNKT細胞欠損Traj18-/-マウスで明らかにする。④WTにおけるiNKT細胞の抗炎症作用を呈する、IL-10以外の機能分子について明らかにする。⑤心Mφ-iNKT細胞間相互作用のin vitroの実験による機能分子の確認を行う。⑥心組織内におけるiNKT細胞の保護作用をより明らかにするためlaser microdissection(LMD)を行い、炎症部位での遺伝子発現を詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度から引き続き、B6系コンディショナルノックアウトマウスを用いたEAMCモデルの作成とBALB/c背景のTraj18ノックアウトマウスの導入・育種・EAMCモデルへの利用が遅れたためである。後者に関しては、H30年度内に受精卵移入とマウスの作製(♀6,♂4を得た)を行うことが出来たため、2019年4月から繁殖と感作実験を開始出来る算段となっている。また、前者に関してはH30(2018)年度に新規ペプチド合成を行い、現在B6系での感作を行っているところである。
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