研究実績の概要 |
ヒポチオシアン酸(HOSCN)はラクトペルオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼ(MPO)のようなヘム型ペルオキシダーゼによって産生されるオキシダントである。マウスにインフルエンザウイルスを感染させ、重症肺炎を誘導すると、肺にMPO発現細胞である好中球が集積してくることから、MPOによって産生されたHOSCNが重症化に関与している可能性を考え、宿主細胞に対するHOSCNの作用を解析している。 これまでに、気道上皮細胞を用いた解析から、RNAウイルスの疑似RNA(poly I:C)で引き起こされる抗ウイルス応答(インターフェロンβの発現誘導やアポトーシス誘導)は、HOSCNによって抑制されること、さらに、この抑制はIRF3の活性化抑制を介して行われることを明らかにした。一方、マクロファージを用いた解析から、TLR3を介したシグナル伝達がHOSCNにより増強され、主要炎症性サイトカインであるIL-6の産生が亢進されることを見いだした。 近年、インフルエンザウイルスによる重症肺炎とオートファジーとの関連性が注目されているので、今年度は、HOSCNが気道上皮細胞のオートファジーに及ぼす影響を解析した。オートファジーのマーカーである抗リン酸化p62抗体,及び 抗LC3抗体を用いたウェスタンブロット法にて調べたところ、HOSCNはp62のリン酸化を促進し、かつLC3-IIの発現を増加することを見いだした。このデーターから、HOSCNによりオートファジーが促進され、これがインフルエンザウイルスによる肺炎の重症化に関与している可能性が考えられた。
|