研究課題/領域番号 |
17K08793
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
福田 敏史 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (50372313)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CAMDI / AMPA受容体 / 記憶 / 学習 / 中心体 |
研究実績の概要 |
現在までにCAMDI結合蛋白質としてAMPA受容体の輸送制御蛋白質KIBRAを同定している。そこで、CAMDIノックアウトマウスにおける記憶・学習行動への影響を解析した。新規物体の認識を評価するNovel object 認知試験においてCAMDIノックアウトマウスは、5分間の短期記憶には問題が無かったことから、新規物体への関心は正常であることが示された。次に24時間後の新規物体への関心について、野生型マウスでは新規物体であることを認知することで新規物体への興味を示す時間が増加する。一方、CAMDIノックアウトマウスは新規物体への興味を示す時間は増加しなかったことから、24時間前の物体を記憶しておらず、新規物体への認知が低下していることが明らかとなった。物体のみならず、社会的な認知行動への影響を調べた。マウスは見知らぬマウスに対して興味を示すが、時間経過によりその興味が減少する。しかし、新規マウスと対面させることで新たな興味が増加することが知られている。CAMDIノックアウトマウスは、この新規マウスへの興味も減少しており、社会的認知行動に異常が認められた。バーンズ記憶試験を用いて、空間学習への影響を調べた。その結果、CAMDIノックアウトマウスは連続した学習のみならず、最終試験から2週間後に残っている記憶の減弱が認められた。これらの結果から、CAMDIノックアウトマウスは認知・記憶・学習に異常があることが明らかとなった。また、CAMDIノックアウトマウスにおいて、記憶形成に重要な分子であるAMPA受容体の細胞膜表面への移行が阻害されていることを見出した。KIBRAはAMPA受容体の移行を負に制御することから、CAMDIはKIBRAと結合することでKIBRA-AMPA受容体間の連携を断ち切り、AMPA受容体の細胞膜表面への移行を促していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAMDIノックアウトマウスの記憶・学習の解析に関しては、概ね順調である。一方で、29年度CAMDIの機能ドメインの探索についてはあまり進んでいないが、30年度以降に予定していたCAMDIノックアウトマウスを用いた中心体と繊毛形成における機能解析が当初予定より進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
申請者がCAMDIと結合して活性を抑制すると論文報告したHDAC6は、基質の一つとしてグルココルチコイド受容体(GR)の安定性を制御するHSP90が知られている。すなわちノックアウトマウスではHPA軸に異常が生じている可能性が考えられる。さらに、子宮内遺伝子導入法を行う際の開腹手術におけるストレス脆弱性を認めている。CAMDIノックアウトマウスを用いてGRの安定化や血中グルココルチコイド濃度の変化など生化学的解析を行う。社会的敗北ストレスを付加した後に社会性の試験を行い、ストレス脆弱性やそれに伴う社会的記憶・学習への影響、さらにPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する可能性を検討する予定である。 また、HDAC6が繊毛形成を制御することは知られていることからCAMDIノックアウトマウスを用いた中心体と繊毛形成への影響を調べたところ、繊毛形成の遅延が認められた。今後は繊毛形成率などを詳細に解析するとともに、ライブイメージング法を用いた中心体におけるCAMDIの挙動や中心体の挙動解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた人件費を使用しなかったため次年度使用額が発生した。 次年度では物品費および人件費・謝金として使用する予定である。
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