CAMDI結合蛋白質としてAMPA受容体の輸送制御蛋白質KIBRAを同定した。また、CAMDIノックアウトマウスにおいて、記憶形成に重要な分子であるAMPA受容体の細胞膜表面への移行が阻害されていることを見出した。そこで、CAMDIノックアウトマウスにおける記憶・学習行動への影響を解析した。CAMDIノックアウトマウスは新規物体への興味を示す時間は増加しなかったことから、24時間前の物体を記憶しておらず、新規物体への認知が低下していることが明らかとなった。また、CAMDIノックアウトマウスは、この新規マウスへの興味も減少しており、社会的認知行動に異常が認められた。バーンズ記憶試験を用いて、空間学習への影響を調べた。その結果、CAMDIノックアウトマウスは連続した学習のみならず、最終試験から2週間後に残っている記憶の減弱が認められた。これらの結果から、CAMDIノックアウトマウスは認知・記憶・学習に異常があることが明らかとなった。 発生期の大脳皮質神経細胞にEGFP-CAMDIを発現させ、その挙動をライブイメージング法により解析した。その結果、移動中の神経細胞においてCAMDIは中心体とともにdilationと呼ばれる先導突起内に形成される構造に局在していた。CAMDIのノックダウンによりdilation形成率が減少することから、dilationの形成不全が神経細胞の移動異常の原因の一つである事が示唆された。また、dilationにおいてCAMDIの輝度が安定―不安定の状態を繰り返していることが明らかとなった。さらに、安定化している状態のCAMDIが存在するdilationに中心体が取り込まれることで細胞体の移動が完了すること、その後CAMDIが不安定化し次の移動のサイクルに移行することを見出した。
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