研究課題
BMPを含むTGF-βファミリーは、細胞の増殖や分化などの生命現象を制御しており、シグナルの異常はがんや難治性疾患などの原因となることが知られている。本研究では、血管内皮細胞および腫瘍形成・転移におけるTGF-βファミリーのシグナルの役割解明を目標とした。TGF-βファミリーのシグナル伝達必須の分子・Smad4、またはBMPシグナルを伝達するSmad1およびSmad5の遺伝子を内皮細胞(血管+リンパ管または血管内皮細胞のみ)特異的に欠損させるマウスを作成した。Smad4遺伝子をVE-カドヘリンプロモーター依存的に欠損させると欠損から3週間以内に死亡したが、Pdgfbプロモーター依存的に欠損させた場合はマウスは生存していた。VE-カドヘリンプロモーター依存的にBMPシグナルを欠損した場合には、遺伝子欠損12日後に死亡した。この結果は、血管内皮細胞およびリンパ管内皮細胞におけるBMPシグナルが生存に必須であることを明らかにした。内皮細胞特異的なBMPシグナルの欠損は、肺、心臓、脾臓、肝臓に顕著な異常を認め、特に肺血管機能が破綻して死亡することを明らかにした。これらのマウスはTGF-βファミリーシグナルの異常が原因となる難治性血管疾患のモデルマウスとしての有用性が示されている。がん微小環境は低酸素となることが知られているが、低酸素環境はTGF-βシグナルを増強することを見出していた。本研究により、低酸素によって誘導される分子として脱ユビキチン化酵素UCH-L1を同定し、UCH-L1がシグナル依存的にSmad2と結合してSmad2を安定化する結果、TGF-βシグナルを増強することを明らかにした。UCH-L1の遺伝子を破壊したがん細胞は生体において腫瘍形成されず、腫瘍形成にはUCH-L1の脱ユビキチン化活性が必須であることを報告した。
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J. Biol. Chem
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10.1074/jbc.RA119.011222.