慢性炎症時に新生される三次リンパ組織(TLO)を介して、リンパ球が炎症組織へリクルートされる分子メカニズムは未だ明らかにされていない。本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で見られるTLOの一種「iBALT」をマウスモデルで再現し、低分子量Gタンパク質Rap1依存的細胞接着シグナルによる、iBALTへのリンパ球のリクルーティング制御メカニズムを明らかにすることを目的とした。 前年度から引き続き、膝窩リンパ節HEV(正常リンパ組織)におけるT細胞のrollingおよびarrest現象を二光子励起顕微鏡または共焦点顕微鏡で観察し、Rap1ノックアウトT細胞、Kindlin-3ノックアウトT細胞、Talin-1ノックアウトT細胞でのHEVへのリクルーティングを解析した。elastase/LPS気管内投与によるCOPDモデルでは、BALF(気管支肺胞洗浄液)のソーティングおよび生体マウス肺の二光子励起顕微鏡観察によって炎症細胞動員を確認できたが、iBALT形成を観察することはできなかった。原因としては、当初想定していた以上に観察方法が難しかったことに加えて、COPDモデルを毎回高い再現性で作れなかったこともあった。また、in vitro でのflow chamber実験系において、固相化ICAM-1、VCAM-1、MAdCAM-1への接着、ローリングの違いをRap1、Kindlin-3、Talin-1の各ノックアウトT細胞を用いて解析し、日本免疫学会にて学会報告を行った。Rap1シグナルの詳細を解明するため、Rap1活性化因子(GEF)および不活性化因子(GAP)をT細胞特異的に欠損する遺伝子組換えマウスの作出を完了し、ケモカイン依存的なRap1シグナル活性化を担うGEFの役割を新しい方法で解析した。
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