研究実績の概要 |
本研究課題ではin vitroにてマウス人口性多能性幹(induced pluripotent stem, iPS)細胞から胸腺上皮細胞(thymic epithelial cells, TEC)を誘導し、胸腺微小環境を構築の下、非iPS細胞由来の造血幹細胞(hematopoietic stem cells: HSC)との相互作用によりT細胞の誘導を試みるものである。これらのT細胞は腫瘍化への危険が低く、治療への応用が期待できる。まずiPS細胞からTECへの誘導であるが、collagen type IVをコートした培養細胞皿にてiPS細胞をLithium chloride, 2-mercptoetanol(ME)存在下に培養する。適宜Activin A, Fibroblast growth factor)7, FGF8, FGF10, bone morphogenetic protein (BMP) 4を加え、内中胚葉及び胚体内胚葉を経由してTECを誘導させる。HSCの精製は、マウスの骨髄細胞を大腿骨と腓骨より採取し、Ficoll密度勾配遠心法にて単核球を回収する。次にlineage marker陽性細胞を精製抗体にて反応させた後、magnetic beads法にて除去する、最終的に回収したlineage markers陰性骨髄単核細胞を、HSCとして使用した。これらのTECとHSCを相互作用させると、弱いながらもCD3の発現が見られた。しかしCD4やCD8のサブセットマーカーは殆ど見られなかった。これらの細胞はT前駆細胞等と考えられる。副作用を調べる為に自家骨髄移植したマウスに投与したが、明らかな自己免疫疾患や腫瘍の発生は見られず長期に生存した。また担悪性腫瘍マウスに投与すると、延命効果が得られた。
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