研究課題
1) マクロファージの機能におけるCD157の受容体あるいは細胞膜外酵素としての役割:M-CSF(L929細胞培養上澄10%)存在下に1週間培養して誘導した野生型対照(WT)骨髄由来マクロファージ(BMMF)はCD157とCD38を表面発現する。LPS刺激によりCD38の発現量が著増するのに対し、CD157の発現量増加は軽微であった。CD157KO-BMMFのLPS刺激によるCD38の発現量はWT-BMMFと比較して増加していた。BMMF及び腹腔MFに蛍光ビーズ、ザイモザンを用いた貪食能の解析でWTとKO間に差は無かった。2)リウマチ様関節炎モデルgp130F759の病態におけるCD157の役割[マクロファージ様滑膜細胞]交配により作出した二重変異マウスgp130F759/CX3CR1eGFP/+をPBSで還流して血管内細胞を除去した後に膝滑膜組織をコラゲナーゼ処理し,得られた滑膜単細胞浮遊液をフローサイトメトリー解析した。約4%のGFP陽性細胞がマクロファージ様滑膜細胞に該当すると考えられた。CD157レポーターマウスCd157-KuO(クサビラオレンジ)の作製を開始した。[gp130F759のリウマチ様関節炎におけるCD157の役割]交配により二重変異マウスCD157KO/gp130F759を作出し(n=6)、12ヶ月齢で対照gp130F759(n=5)と比較した。CD157KO/gp130F759の内、5匹の関節炎スコアはgp130F759と同等(2点)であったが、1匹は(11点)と重症化した。関節炎スコアと無関係に全てのCD157KO/gp130F759において腸間膜リンパ節細胞の増加を認めた。重症CD157KO/gp130F759では、滑膜細胞数が著増していた。交配で得られるCD157KO/gp130F759の産仔が少なく、5ヶ月齢より12ヶ月齢の解析を優先した。
3: やや遅れている
CD157レポーターマウスCd157-KuO(クサビラオレンジ)の作製開始が年度末となってしまったことから、やや遅れているとの区分とした。この遅れの理由は、共同研究者に独自のCD157関連遺伝子改変マウス作成計画のあることが判明し、失敗例の情報共有と競合・重複をさけるための検討が行われたことにある。しかしながら、その検討の結果、両者の作成する遺伝子改変マウスが共同研究として相補的に活用される可能性が出て来ており、CD157研究の全体としては安全性の高い準備状況となっている。また、開始後の進捗は順調であり、7月末には個体が搬入される予定である。さらに、時間を要する二重変異マウスの作成に関しては、CD157KO/gp130F759については1年の経過観察まで終了しており、gp130F759/CX3CR1eGFP/+も作出済みである。したがって、平成30年度以降の準備は着実に進んでおり、全体としてはそれほど遅れていないと考えられる。
1) マクロファージの機能におけるCD157の受容体あるいは細胞膜外酵素としての役割:LPS刺激CD157KO-BMMFにおけるCD38の発現量増加は、M1マクロファージにおいてCD157とCD38が相補的に機能する可能性を示唆する。CD38がM1マクロファージの新規マーカーとして報告された(PROS ONE 2015)ので、M1/M2型への分化能や機能との関連について調べる。CD157の受容体機能については、CD38KO-腹腔MFにSCRG1を添加し、形態変化やチロシンリン酸化を解析する。2) リウマチ様関節炎モデルgp130F759の病態におけるCD157の役割1.マクロファージ様滑膜細胞(MLS)の時間空間的局在変化 : MLS候補が同定できたのでgp130F759/CX3CR1eGFP/+を用いて表面抗原解析による性格付けを進め、免疫組織染色法により局在を確認する。gp130F759/CX3CR1eGFP/+の関節炎は12ヶ月齢まで観察し、5ヶ月齢のMLSを付着法あるいはセルソーティングにて濃縮し、リアルタイムPCR法により炎症関連遺伝子の発現を定量解析する。関節炎最初期における役割が示唆されれば、マイクロアレイあるいはRNASeqにより病態関連遺伝子候補を探索する。2. CD157陽性細胞とSCRG1陽性細胞の局在解析:二重変異マウスgp130F759/Cd157-KuOを作出し、関節炎発症によるリンパ組織・滑膜組織でのCD157発現細胞の系譜と動態をフローサイトメトリーで解析し、局在変化を免疫組織学的に解析する。3. gp130F759のリウマチ様関節炎最初期におけるCD157の役割:CD157KO/gp130F759の12ヶ月齢の解析で観察された重症例は興味深いものの浸透度が低いためにその分子機構の解析には困難が予測される。解析の優先度は下げざるをえない。
29年度早期からのレポーターマウスCd157-KuOの委託作製を計画していたが、共同研究者と今後の研究の進め方を検討したところ、共同研究者が独自に先行して進めていたCD157関連遺伝子改変マウス作製計画の存在が判明し、それとの重複を避けるための調整・再検討に時間を要した。委託作製は高額なため、納品時に支払い不能とならないように予算は慎重に運用する必要があり、必須の物品購入に限定し抑制的に運用せざるを得なかった。しかし、年度内にレポーターマウス作製方針を決定して委託作製を開始し、30年度7月に完成予定となった。したがってレポーターマウスは研究の進捗を遅れさせること無く、期間内に十分活用できる。29年度の残額が多く見えるが、実質的には殆どすべて使用予定であり、また、30年度には海外での学会発表を計画しているので、有効かつ適正に運用される見込みである。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Cell Stem Cell.
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