研究課題/領域番号 |
17K08800
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
寺原 和孝 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (50469954)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HIV / 細胞死 / CD4陽性T細胞 / Flt3-L / GM-CSF / 制御性T細胞 / Th17 |
研究実績の概要 |
本研究では、HIV感染ヒト化マウスモデルでの解析により、感染初期に誘導される細胞死の特徴と感染様式との関連、さらには病態形成との関連についてin vivoで明らかにすることを目的とする。 HIVの主たる感染標的はCD4陽性T細胞である一方、樹状細胞やマクロファージもその標的と成り得る。そして、抗原提示を介した樹状細胞-CD4陽性T細胞間の相互作用がHIV感染伝播に重要であることがin vitroでの研究から示唆されている。しかしながら、ヒト化マウスにおいては樹状細胞やマクロファージ等の骨髄系免疫細胞の分化が乏しいことから、H29年度はヒトサイトカイン導入によるヒト樹状細胞の分化誘導を検討した。 ヒトFlt3-LおよびGM-CSF発現プラスミドを用いて、流体力学的遺伝子導入法によるin vivo transfectionを行なったところ、骨髄系樹状細胞の分化誘導にはFlt-3が、骨髄系樹状細胞の成熟度進行にはGM-CSFが寄与していることが判明した。したがって、Flt-3とGM-CSFを同時に導入することで骨髄系樹状細胞の分化ならびに成熟度を亢進させることが可能となった。興味深いことに、これらサイトカインはT細胞には直接作用しないものの、GM-CSF存在下でFoxp3陽性CD4陽性T細胞の分化誘導が認められた。そして、このFoxp3陽性CD4陽性T細胞を細分画したところ、GM-CSF単独導入ではCD45RA-Foxp3highの活性型制御性T細胞が、Flt3-L・GM-CSF同時導入ではCD45RA-Foxp3lowのTh17が有意に誘導されていた。以上の結果から、HIV感染による細胞死と病態形成との関連を解析するうえで、Flt-3およびGM-CSFの導入パターンを変えたヒト化マウスは有用なツールになるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒト化マウスにおいてHIV感染伝播を担う細胞群の一つである樹状細胞を分化誘導させる試みとしてヒトサイトカイン導入を検討したところ、Flt3-LおよびGM-CSFの誘導様式が骨髄系樹状細胞のみならずCD4陽性T細胞亜集団である制御性T細胞およびTh17の分化誘導をコントロールしていることが判明した。つまり、Flt3-LおよびGM-CSFのin vivoでの効果として、骨髄系樹状細胞の分化・成熟度亢進のみならず、CD4陽性T細胞集団の中でもとりわけHIVの感染標的になりやすいといわれている制御性T細胞およびTh17の分化促進に寄与するという、新しい知見が得られた。本知見については当初予期していなかったが、HIV感染による細胞死と病態形成との関連を解析するうえでは、ヒトサイトカインを導入した本ヒト化マウスモデルは今後重要なツールになり得るものである。なお、本知見については論文としてまとめ、現在、学術雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトサイトカイン導入により樹状細胞、制御性T細胞、Th17の分化誘導を亢進させたヒト化マウスモデルを使い分け、HIV感染による細胞死と病態形成との関連を解析する。具体的には、血中ウイルス量の経時的解析、CD4陽性T細胞の各亜集団における感染HIVの定性・定量的解析、アポトーシスあるいはパイロトーシスといった細胞死様式についての定性・定量的解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度の研究成果を論文として公表するために平成29年1月下旬に論文投稿したが、英文校正費として5万円、論文掲載費として30万円、論文査読コメントへの対応としての追加実験に伴う物品費として約40万円を未使用にしていた。 (使用計画) 上記の品目については平成30年度初旬にはほぼ全て使用する予定である。
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