研究課題/領域番号 |
17K08801
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
安井 文彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, プロジェクトリーダー (40399473)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高病原性 / 宿主免疫 / 低応答性 / 重症化 |
研究実績の概要 |
ヒトへの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)H5N1ウイルス感染は、過剰なサイトカイン産生を引き起こし、高い致死性を示すと考えられている。この重症化機序に関わるウイルス因子や自然免疫応答は報告されているが、ウイルス排除に重要な役割を果たす獲得免疫応答の関与については不明な点が多い。本研究では、マウス及びカニクイザルを用いて、低病原性であるパンデミックH1N1(2009)インフルエンザ(H1N1 pdm)ウイルス、またはHPAI H5N1ウイルス感染後のウイルス排除過程における宿主獲得免疫応答、特に液性免疫誘導を経日的に解析する事を目的とした。 今年度は、H1N1 pdmウイルスまたは、HPAI H5N1ウイルスを感染させたBALB/c マウスから経日的に血液、肺並びに脾臓を採取し、ウイルス特異的抗体価及び肺組織中ウイルス価の測定、並びに脾臓切片を用いた免疫組織化学染色を行なった。HPAI H5N1ウイルス感染マウスは、経日的に体重が顕著に減少し、感染10日後までに全個体が死亡した。一方、H1N1 pdmウイルス感染マウスでは、軽度な体重減少にとどまり、抗原特異的抗体誘導時期と相関して肺組織中ウイルス量が顕著に低下し、100%生存した。HPAI H5N1ウイルス感染個体では、H1N1 pdmウイルス感染個体に比べて明らかに中和抗体価が低下・遅延していた。ウイルス感染初期に産生される低親和性のポリクローナルIgMの誘導に重要であるB細胞濾胞が、H1N1 pdmウイルス感染個体では、胚中心の周りに密に形成されていたのに対して、HPAI H5N1ウイルス感染個体では明瞭なB細胞濾胞形成が観察されなかった。HPAI H5N1ウイルス感染個体では、抗原特異的B細胞の活性化に異常がみられる事が示唆された事から、次にB細胞の活性化に重要な役割を果たしている抗原提示細胞の局在について解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたマウス感染実験は、予定通り行う事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フローサイトメトリー法を用いて、脾臓及び感染局所である肺組織に集積したリンパ球種の同定及びその活性化状態の解析を行なう予定である。また、共同研究先からインフルエンザウイルスを感染させたカニクイザルの試料も入手できた為、マウスでの解析のみならず、カニクイザルにおいても同様に宿主免疫低応答性が同一の機序で惹起されているか否かを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、免疫応答解析に使用するフローサイトメトリー用抗体を多数購入する予定であったが、研究室で保有している抗体を使用することができた為、使用予定額より少額となった。今後は、フローサイトメトリーを用いた多項目解析を更に進める予定であり、多くのマーカー抗体を購入する予定である。更に、感染局所に集積した免疫細胞の遺伝子発現解析も併せて行なう予定である。
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