研究課題
これまでに、PfDyn2のリン脂質との相互作用につき主に解析してきた。PfDyn2は、陰性荷電をもつ膜リン脂質を含む人工球状リポソームに強く結合し膜変形を引き起こす。電顕を用いてチューブ状に変形した膜の表層部に、PfDyn2と考えられるタンパクの層を初めて観察できた。本年度は、この系を用いPfDyn2のGTP加水分解と膜変形との共役機構を(1)ネガティブ染色法と電子顕微鏡(2)高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)(3)クライオ電子顕微鏡を駆使して解析した。まず、(1)について、PfDyn2によりチューブ状に変形した膜をネガティブ染色と電顕を組みあわせて観察した。PfDyn2とリポソームの反応時間が短いと球体の真ん中にくびれが生じたリポソームが多数観察された。また、反応時間が長いと径が均一なチューブ状膜が多数観察された。現在、この変形の違いは何を意味するのかについて解析を進めている。変形した膜にGTPを加えるとリポソームは球状に変化した。GTPの存在下ではPfDyn2のリン脂質との結合性が変化した可能性がある。(2)高速原子間力顕微鏡を用いて、膜変形の動態を観察すべくその条件を整えている。リポソームを用いて膜変形を観察する場合には、そのサイズが大きいこともあり、AFMの支持体であるマイカ台にリポソームが付着できないことが判明した。まずは、マイカ台にリポソームを付着する方法を探索している。(3)変形した膜上のPfDyn2の配向を調べるべく、クライオ電子顕微鏡観察を試みた。PfDyn2ーリポソーム混合物を凍結した際に、PfDyn2がリポソームからすべて離れてしまうことが判明した。PfDyn2をリポソーム膜上にとどめるために、化学的に固定する方法も含めてサンプル調製法を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
ネガティブ染色と電顕観察により、PfDyn2の性状解析を大いに進めることができた。しかし、この方法では、PfDyn2の膜上での経時的な動態を観察することができない。そのため、電顕レベルで分子動態が観察できる高速原子間力顕微鏡の観察を試みている。観察条件を改良しつつ、数回の観察を既に行って問題点の抽出に努めた。今後、平面膜などをさらに試して、観察できる系の構築に尽力する。クライオ電子顕微鏡は、実績の項で示したがサンプルの調製に問題点がある。今後、サンプルの調製を改良していく。
PfDyn2の膜上の動態、構造解析を高速原子間力顕微鏡及びクライオ電子顕微鏡で観察するための、サンプル調製、観察条件の改良に尽力する。
(理由)今年度分の経費は、効率よく執行できた。今後購入予定の消耗品が残予算では購入できないので、繰り越して次年度予算と合わせて購入することとした。(使用計画)消耗品を購入予定である。
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