研究課題/領域番号 |
17K08813
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
安田 好文 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50333539)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 線虫感染 / 喘息 / パパイン / ダニ抗原 / 卵白アルブミン(OVA) / IL-33 / グループ2自然リンパ球(ILC2s) / 好酸球 |
研究実績の概要 |
糞線虫Strongyloides venezuelensis感染マウスは、感染排除後も長期間に渡りグループ2自然リンパ球(ILC2s)が肺に残り、次の感染に備えていることを研究代表者は見出している。この感染経験マウスのILC2sはナイーブマウスのILC2sよりも反応性が高いため感染以外の刺激にも強く反応するか検討した。 (1)糞線虫感染マウスにプロテアーゼ活性を持つアレルゲンであるパパインを点鼻投与すると、パパイン単独投与群よりも強くILC2sと好酸球の肺への集積がみられた。この時、IL-33発現には差がないが、IL-5, IL-13といったTh2サイトカインが発現上昇していることから、ILC2sが強力に活性化してこれらのサイトカインを大量に産生し、好酸球を多く集積させたと考えられる。 (2)パパインはプロテアーゼ活性によりIL-33を遊離させることが知られているため、同じようにプロテアーゼ活性を持つダニ抗原(HDM)を糞線虫感染経験マウスに点鼻投与したところ、パパインの場合と同様にILC2sの増加がみられたが、好酸球の増加は非常に弱く、代わりに強い好中球浸潤が認められた。 (3)IL-33遊離を引き起こさないと考えられる卵白アルブミン(OVA)を水酸化アルミニウムをアジュバントに用いて免疫し、OVA点鼻投与で誘導される肺の炎症への糞線虫感染の影響を検討した。予想に反して、糞線虫感染はOVAによる炎症を増悪した。これはIL-33以外のTh2細胞由来の何らかの因子がILC2sを活性化したものと考えられる。 以上の結果より、糞線虫感染後はアレルゲンによる肺の炎症が増悪することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDMやOVAを用いた実験結果は予想されたものではないが、線虫感染が肺の炎症反応を増悪するという当初の仮定には反しておらず、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はILC2sが維持されるメカニズムを明らかにする。 ILC2sは感染排除後まで長期間観察されるが、このILC2は感染によって増加した細胞がそのまま残っているのか、細胞分裂、他組織からの流入などによって世代交代が起こっているのかを調べる。感染マウスよりILC2sを採取し、CFSEでラベルして感染マウスに移入する。経時的に肺ILC2sを採取し、CFSE陽性細胞の割合と、CFSEの希釈の程度をフローサイトメトリーで解析する。また、感染マウスより採取したILC2sを正常マウス肺に移入し、ILC2sが保有する内在性因子だけで維持できるのか、ILC2s以外の外来性因子が維持に関与するのかを調べる。ILC2sの誘導にはIL-33やIL-25が重要であることが知られている。これらのサイトカイン投与で誘導されるILC2sとSv感染によるILC2sの生存期間を比較し、IL-33やIL-25だけで長期生存可能なのか、その他の因子が必要なのかを調べる。ILC2sの機能はTSLPやIL-7, IL-9, IL-27, IL-1βによって増強、抑制、変化することが知られている。そこで、Sv感染後の肺でのこれらのmRNA発現を調べ、さらにILC2s維持における役割をリコンビナント蛋白や抗体、遺伝子組換えマウスを用いて解析する。 これらの実験により、糞線虫感染後のILC2sの維持に必要なサイトカインが明らかになり、ILC2sの維持される機構が明らかになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿関連費用として使用する予定であったが、諸事情により執筆、投稿が遅れたため。次年度初期に投稿予定である。平成30年度の助成金は当初の予定通りグループ2自然リンパ球の維持メカニズムの解析に用いる。
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