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本研究は疾病媒介蚊のピレスロイド殺虫剤の標的分子である電位感受性Na+チャンネル(VSSC)分子の変異をフィールド調査により解析し、あわせて、当該変異によりどの程度殺虫剤耐性になるかを培養細胞レベルで解析を行うことを目的として進めてきた。
疾病媒介蚊のフィールド解析の結果、ネパールのネッタイシマカは、ピレスロイド系殺虫剤に対して高い抵抗性を示した。また、本殺虫剤の標的分子であるVSSC分子に変異(V1016G)が多く観察され、この変異はネパール国内で出現したのではなく、既に変異を有するネッタイシマカが近隣諸国から2000年代になってから、ネパールに侵入したと推察された。一方で、ネパールのヒトスジシマカはピレスロイド系殺虫剤に対して抵抗性は低く、またVSSC分子に変異は検出されなかった。以上に関して明らかにしたうえで、さらに近隣国でのフィールド解析を計画したが、COVID-19による影響で実施には至らなかった。
VSSC分子のin vitro培養細胞での発現解析については、以下のように進めてきた。CHO-K1細胞にVSSC分子のαサブユニットとβサブユニットを同時に発現させることにより、チャネル分子による電流の計測が可能になった。しかし、安定した計測が難しかったことから、VSSC分子の強制発現による細胞毒性の影響が考えられた、そこでドキシサイクリンでVSSC分子を一過性に発現誘導可能なシステムを作製し、さらに同時にEGFP分子を発現させることにより、VSSC分子の発現をモニターできるシステムを構築した。これらのシステムによる電流計測解析を進めたが、ピレスロイド系殺虫剤による阻害効果解析までは実施できなかった。
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