研究実績の概要 |
エキノコックスは主にキツネと野ネズミの間で生活環が維持されており、終宿主対策として駆虫薬入りベイト散布が北海道内の一部の地域で行われている。しかしながら本法では多包条虫の生活環を破壊することは困難とされ、新しい媒介動物対策が求められている。本研究では、現行の駆虫薬入りベイトに虫体抗原成分やアジュバントを配合することで、駆虫薬入りベイトにワクチン機能を付加できないかをイヌをモデルとした感染実験により検討している。一方、中間宿主である野ネズミに対する対策については、昨年度に引き続き、抗エキノコックス薬開発の成果を発展させ、共同研究者から提供される薬剤を用いて、マウス虫卵感染の予防および病巣の治療試験を実施し、中間宿主対策やヒトの予防・治療薬の開発を検討している。 平成30年度、イヌをモデル動物として、ワクチン強化ベイトに配合するべき抗原を見出すため、多包条虫原頭節の凍結乾燥物(①群)、成虫培養上清および凍結させた虫卵(②群)、活性を示す虫卵(③群)を8週間連続的に継続経口投与した(n=2)。その後、50万原頭節を免疫イヌおよび未感作のイヌ(コントロール)に経口投与し、35日目の感染虫体数を計数した。未感作群(コントロール)に感染した虫体数は、216,150匹および316,200匹であった。①群の虫体数は、230,013匹および290,788匹、②群は46,000匹および179,375匹、③群は179,375匹および36,400匹であった。②および③群は感染期間中、予想通り未感作群には通常観察されない、激しい粘血便や下痢を呈したが、著しい虫体排除には至らなかった。 一方、昨年度見出した中間宿主に対する新しい薬剤に、感染予防効果があるかどうかを調べた。その結果、病巣の発育抑制効果は示したものの、予防効果は示さないことが明らかになった。
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