研究課題/領域番号 |
17K08816
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
葛西 真治 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (80332360)
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研究分担者 |
冨田 隆史 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20180169)
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20435712)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CRISPR/Cas9 / ゲノム編集 / イエバエ / ナトリウムチャネル / 殺虫剤抵抗性 / ピレスロイド |
研究実績の概要 |
29年度の計画は、イエバエの卵にターゲット遺伝子からデザインしたガイドRNAとCRISPR/Cas9タンパクをインジェクションし、本昆虫種においてもゲノム編集の応用が可能であるかどうかを確認する事であった。29年度は、まずイエバエ3系統12個体からwhite遺伝子の部分配列をPCR法によって増幅後、遺伝子配列を解析することによってwhiteのコンセンサス配列を決定した。さらにイエバエの産卵直後の卵にwhite遺伝子のガイドRNAとCRISPR/Cas9タンパクをインジェクションし、その卵由来のゲノムDNAに挿入/欠失が入ったことがリアルタイムPCRの融解曲線法によって確認された。イエバエにおいてもCRISPR/Cas9の系でゲノムが編集可能であることが確認できた。本研究グループはこれまで、ネッタイイエカやネッタイシマカの卵へのRNAインジェクションを継続的に行ってきたが、イエバエへのインジェクションは初めての試みであった。イエバエの卵殻は蚊の卵殻に比べやや硬く、通常のキャピラリーでは破損しやすいことが判明した。キャピラリープラーの条件を検討することで、RNAのインジェクションが可能になることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度の計画通り、イエバエ3系統からwhite遺伝子の部分配列をPCR法によって増幅後、配列を解析することによってwhiteのコンセンサス配列を決定した。それをもとにwhiteのガイドRNAをデザインし、イエバエの初期卵にCRISPR/Cas9タンパクとともにインジェクションした。その卵由来のゲノムDNAに挿入/欠失が入ったことがリアルタイムPCRの融解曲線法によって確認され、イエバエにおいてもCRISPR/Cas9の系でゲノム編集が可能であることが確認できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
29年度引き続きイエバエwhite遺伝子のノックアウトを試みる。ガイドRNAのインジェクションに用いる装置の改良、RNAの濃度や量、キャピラリーの構造改良、インジェクション後の卵の環境など条件を変えて試みる。さらにイエバエJPskdr系統のナトリウムチャネルのエクソン17aのノックアウトを試みる。このエクソンは選択的スプライシングで生じるマイナーなエクソンであるが、殺虫剤抵抗性に関与する可能性がある突然変異を含む。このスプライシングエクソンをノックアウトすることで、①イエバエの生存力に影響があるのか、②イエバエの殺虫剤感受性は変化するのか、を殺虫試験により確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力研究者のけがによる入院のため、ガイドRNAのインジェクションに関する技術移転が遅れ、やや当初の計画よりもインジェクションの数が少なかったため。
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