研究課題/領域番号 |
17K08817
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
安田 加奈子 (駒木加奈子) 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所 熱帯医学・マラリア研究部, 研究員 (50415551)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / 転写因子 / KHドメイン / 核局在 / RNA結合ドメイン / ChIP-Seq |
研究実績の概要 |
今年度は、申請者が過去に同定したマラリア原虫独自の転写因子PREBP、および、オルソロググループ解析によって見出したRNA結合ドメインを持つ新規転写因子候補 (仮名Pf1とする)について、前年度までに樹立済みである、GFPと各因子のフュージョン蛋白の安定発現遺伝子組換え熱帯熱マラリア原虫を利用し、GFPの蛍光を利用して、その生原虫細胞での発現パターンを観察した。 その結果、PREBP-GFPについてはリング期には細胞質に局在し、トロホゾイト期から初期シゾント期には核に局在し、後期シゾント期からメロゾイト期にかけては再び核外の細胞質に局在する、というパターンが観察された。PREBPが核に局在する時期は、PREBPが発現を調節していると考えられるターゲット遺伝子1-cys-prxの発現亢進時期と一致し、PREBPの転写因子としての機能が核局在によって調節されていることが示唆された。 また、新規因子のPf1に関しては、リング期とトロホゾイト期は核と細胞質の両方に局在するが、シゾント期を通じて、細胞質ではなく、核に局在しているというパターンが観察された。これはPf1が既に同定済みのPREBPとは異なるステージで、異なる遺伝子群を制御している転写因子である可能性を示唆している。 続いて、PREBP-GFP発現原虫を用いて、抗GFP抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)をおこなった。抗体の濃度を何種類か試した結果、抗体の至適濃度が決定できた。ChIP産物を定量 PCRで解析した結果、ターゲットの1-cys-prx遺伝子の上流域が選択的に濃縮されていた。このChIP産物を用いて次世代シーケンサーで解析することによってPREBPのターゲット遺伝子群が網羅的に同定できると期待される。また、同様の条件にて、Pf1のターゲット遺伝子も同定できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の最大の目的は、マラリア原虫の新規転写因子のターゲット遺伝子群を網羅的に同定することであるが、そのツールとして最も重要な、GFPと因子のフュージョンタンパクの安定発現株が樹立できたこと、また、それらを用いて、これら転写因子の機能が核局在によって調節されている可能性を新たに見出したので、成果は上がっており、おおむね順調に進展していると考えられる。また、ChIP-Seqによってターゲット遺伝子群を網羅的に同定する準備が整ったので、最終年度に向けてさらなる成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
PREBPおよび、Pf1がマラリア原虫染色体上でどの遺伝子群の5’に結合しているのかをクロマチン免疫沈降と次世代シーケンサーによる網羅的ChIP-Seqによって解析し、これらのKH因子群が調節する遺伝子群を明らかにする。得られた遺伝子群が実際にKH因子群による制御を受けているかを確認するために、トランジエントな因子の過剰発現を利用したルシフェラーゼアッセイをおこなう。これを目的として、既に樹立済みであるPREBPの転写活性化能をアッセイするためのプラスミドベクター、p1-10R PREBP (Komaki-Yasuda et al. PLOS One 8:e74701, 2013)を改変し、候補遺伝子群のプロモーター領域とKH因子群の遺伝子を挿入する。この様にして作成したプラスミドベクターはKH因子群が過剰発現される発現カセットと、候補遺伝子のプロモーターの支配下にあるルシフェラーゼ遺伝子を同時に持つこととなる。これらのプラスミドベクターを原虫にエレクトロポレーションによって導入し、24時間後のルシフェラーゼの活性を調べることによって、実際にKH因子によって、候補遺伝子プロモーターを介した発現の亢進または抑制があるのかを調べることができる。 明らかとなった遺伝子群のの5’の配列についてのバイオインフォマティクス解析結果から、各転写因子の結合モチーフを明らかにする。 因子のKHドメインが認識して結合するcis-elementの状態が実際に一本鎖DNAになっているのかをin vitroのゲルシフトアッセイ、in vivoのS1ヌクレアーゼマッピングの両方の解析によって明らかにする。
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