ヨーロッパ腐蛆病はミツバチの法定伝染病に指定される獣医学分野のみならず農学分野においても感染対策が重要な感染症であるが、その感染機構の詳細は明らかになっていない。申請者はヨーロッパ腐蛆病菌のゲノム情報から見出した病原性関連遺伝子の1つと考えられるコラーゲン結合蛋白質をコードする遺伝子に着目し、当該遺伝子の機能解析、特に本菌の病原性発揮への関与を明らかにすることを目的として本研究課題を進めている。
今年度は当該遺伝子がコードする蛋白質のコラーゲン結合能を確認するため、まずは当該遺伝子を発現させるプラスミドを構築し、大腸菌内で発現させた後、アフィニティ精製を行った。精製後得られた蛋白質は、純度および濃度を確認し、当該蛋白質のコラーゲン結合能をELISA法にて解析する系を確立した。
コラーゲン結合解析には3種のコラーゲン(I型、III型、IV型)を使用した。具体的には96穴プレートにこれらのコラーゲンを固相化した後、精製したコラーゲン結合蛋白質を反応させ、洗浄後、抗体を用いてコラーゲンに結合した当該蛋白質を定量した。その結果、当該蛋白質はコラーゲン結合能を有すること、その結合の度合いはコラーゲンの種類によって異なることが明らかになった。また昨年度の計画では、当該蛋白質の分子量が大きいことから、精製蛋白質を用いてのアッセイは実現不可能であると予想していたが、今年度新たに精製した全長蛋白質が得られたため、当該蛋白質の機能をより詳細に解析することも可能になった。
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