研究課題/領域番号 |
17K08821
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大内田 理佳 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80391887)
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研究分担者 |
幸 義和 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (60345030) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結核ワクチン / 経鼻ワクチン / 粘膜免疫応答 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
ナノゲルを利用した結核経鼻ワクチンのシステムアップのための代表抗原として、Ag85Bを発現するベクターを大腸菌に組み込み、組み換えAg85Bタンパク質を作製した。6MUrea溶液に溶解された大腸菌の全タンパク抽出液よりAg85Bをアフィニティーカラムにより精製し、ナノゲルと混合することでナノゲル化を行った。さらにPBS透析後、マウスに1週間ごとに計3回経鼻投与を行った。投与量としては、一回の免疫あたり10ugの抗原および10ugのCyclic-di-GMPをアジュバントとして用いた。ワクチン投与後に誘導される免疫応答の有無を、マウスの脾臓および肺における抗原特異的なヘルパーT細胞をELISPOTアッセイにより検討することで評価した。その結果、抗原特異的なTh1が、アジュバントの存在下で脾臓および肺の両組織において有意に誘導されてくることが分かった。また、同様に、Th1サイトカインの産生も有意に認められた。これらの抗原特異的Th1が、感染に対して防御的に機能するか否かを評価するために、医薬基盤・健康・栄養研究所、霊長類医科学研究センターの保富康宏先生との共同研究のもと、ワクチンを投与したマウスに結核菌を感染させ、一定期間後における脾臓および肺での結核菌数を測定した。比較群として、未免疫コントロールに加え、ナノゲルAg85B投与群とポジティブコントロールとして現行のBCGワクチンを皮下投与したマウスを準備し実行した。感染後、8週及び12週後に脾臓及び肺の組織を摘出し、PBSに懸濁後、系列希釈を作って結核菌寒天培地に播種した。さらに4週後における寒天培地上のコロニーを計測し、菌数の評価を行う。以上は、現在進行中で、ナノゲル経鼻ワクチンによる防御免疫の有無を評価予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では、(1)抗原となる組み換えタンパク質の作製および精製、(2)マウスを用いた免疫応答の誘導の有無、および(3)ワクチンによる防御免疫誘導の有無を解析することを目的とした。 本年度の上半期において、抗原となるAg85Bの組み換えタンパク質を大腸菌大量培養により発現させ、その後精製および透析、ナノゲル化を行った。ナノゲル化したAg85BをSTINGリガンドであるcyclic-di-GMPと共に経鼻投与し抗原特異的な免疫応答が誘導されることを全身および肺で確認することができた。さらに、医薬基盤・健康・栄養研空所、霊長医科学研究センターにおける共同研究のもと、ワクチン投与マウスを用いた結核菌感染実験を進めることができた。現在結果を取りまとめている最中であるが、概ね計画通りに実験を進めることができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度における実験進行度が順調であることを受けて、平成30年度では当初の計画通り以下の通り進める。 (1)ナノゲル経鼻ワクチンによる防御免疫の誘導機構を理解するために、ワクチン経鼻投与後の抗原の体内動態を、免疫組織染色により解析する。さらに、標識抗原を用いて経時的な体内分布を、様々な組織を分離し測定する予定である。 (2)ナノゲル経鼻ワクチンで誘導された抗原特異的T細胞(Th1)の肺組織への浸潤機構について解析するために、Th1のリクルートメントに関連する可能性が示唆されているTh17について、その誘導の有無をELISPOTアッセイやELISAアッセイで検出し、その重要性を中和抗体などを用いて検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
医薬基盤・健康・栄養研究所、霊長類医科学研究センターにおける共同研究で、マウスの飼育および感染施設の利用に際して生じた金額を支払う予定であるが、現在進行中であり、支払総額が決定していないことから、2018年度中で本実験が完全に終了した時点で支払う予定である。
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