研究課題
本年度は、結核に対するより効果的なワクチン開発を目指すため、先行して解析している結核代表抗原のAg85Bに加え、①細胞性免疫を惹起することで知られるTB10.4、②感染初期に結核菌から分泌されるESAT6、および潜伏期の結核菌に関連する抗原Rv2660をそれぞれ連結させたキメラ抗原を新たに設計および作製した。結核菌H37Rvゲノムより各抗原の核酸配列を情報抽出し、大腸菌における組み換えタンパク質発現用のpET-20bベクターに挿入した。さらにRosetta2大腸菌に形質転換させ、6M尿素下でタンパク質抽出ならびにアフィニティー精製、ゲルろ過を実施し、精製抗原を得た。これをナノゲルと混合しPBSに段階透析をすることでワクチン抗原を調製した。次に、7週齢のBalb/c♀マウスに、10ug抗原と粘膜アジュバントとしてcyclic-di-GMP 10ugを組み合わせて、1週ごとに計3回経鼻投与を行った。最終免疫より1または2週後において、脾臓および肺組織からCD4細胞をマグネットビーズで精製し、in vitroにおいて、未免疫マウス脾臓より精製した抗原提示細胞と共培養し、抗原刺激により誘導される特異的免疫応答をELISPOTで解析した。その結果、抗原刺激依存的にアジュバントを加えた免疫群において、特異的Th1が顕著に誘導されてくることがわかった。また、市販のESAT6リコンビナントを刺激として用いた条件下でも、同様に抗原特異的Th1が誘導されることも確認した。以上から、本キメラ抗原が十分な免疫原性を持つことが実証された。今後、キメラ抗原およびAg85Bを混合し、ナノゲルを用いた経鼻免疫マウスにおける感染実験によりワクチン有効性の評価を進めたいと考えている。
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Mucosal Immunology
巻: 12 ページ: 1391-1403
10.1038/s41385-019-0203-z. Epub 2019 Sep 24.