研究課題
ラクトバシラス属細菌の一部が、クロストリジウム・ディフィシル(CD)の毒素産生を抑制することが報告されているが、双方の関係性については依然として不明な点が多く存在する。そのため、ラクトバシラス属細菌がCDの毒素産生に及ぼす影響を解析した。CD毒素産生量を簡便に検出するため株化細胞のLDH活性を指標とした細胞毒性試験に関する基礎的検討を行い、本試験に有用な細胞株や培地、培養条件を明らかにした。ラクトバチルス・ファーメンタムATCC 9338株(Lf9338株)とCD ATCC BAA1870株(CD1870株)の混合培養上清は、CD1870株の単独培養上清と比してVero細胞に対する細胞毒性はほぼ同じであるため、Lf9338株はCD毒素産生に影響を及ぼさないことが確認された。しかし、ラクトバチルス・レイチマーニイATCC 7830株(Ll7830株)とCD1870株の混合培養上清は、CD1870株の単独培養上清と比してVero細胞に対する細胞毒性を低下させたため、Ll7830株はCDの毒素産生性を減弱させることが示唆された。また、Ll7830株に影響を受けるCD1870株遺伝子群を転写レベルで解析するため、Ll7830株培養上清をCD1870株の培地に添加し、一定期間培養後に全RNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を行った。その結果、毒素産生遺伝子やその調節遺伝子のほか、アミノ酸代謝、シグナル伝達、膜輸送に関わる遺伝子などが、Ll7830株培養上清により調節を受けることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
ラクトバシラス属細菌により影響を受けるクロストリジウム・ディフィシルの遺伝子群が網羅的に同定され、毒素産生に関わる遺伝子のほか機能未知の興味深い遺伝子が含まれることが明らかとなったため。
今年度までにトランスクリプトーム解析を用いて同定された遺伝子群の破壊株や緊縮応答に関わるRelA破壊株を作製する。それらを用いてデオキシコール酸やラクトバシラス属細菌との関係性を本菌の増殖や毒素産生、芽胞形成に焦点を絞って解析し、破壊した遺伝子の機能を明らかにする。前年度までに得られた研究成果で学術論文を作成する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件)
PLOS ONE
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