研究実績の概要 |
Bacteroides fragilis は腹腔内感染症等の起因菌で、特にカルバペネム耐性は化学療法を難化させる。本研究では、B. fragilis の新規カルバペネム中等度耐性因子の探索と機能解明を目指す。平成 29 年度は、中等度耐性 B. fragilis GAI92214 株の全ゲノム配列を完全に解読した(PacBio RSII、MiSeq を併用)。本菌種で既知の全ゲノム株(NCTC 9343, YCH46, 638R)との比較ゲノム解析の結果、本株に特異性の高い約 210 kb の領域が存在した。本領域には薬剤耐性遺伝子(Tet 耐性、Erm 耐性、class D β-lactamase 遺伝子など)が集積していた。class D β-lactamase はカルバペネム耐性に寄与する可能性があり、平成 30 年度は、本酵素と上流 promoter 領域を大腸菌用ベクターへ挿入した。得た組換え大腸菌の Ampicillin MIC は陰性コントロールの 64 倍 を示したが、Meropenem MIC に有意差は認められなかった。他菌種にて本酵素ホモログが元の菌種内でのみ活性を示した報告例がある事から、令和元年度に我々は、E. coli-Bacteroides シャトルベクターの入手、全配列決定、改変、導入条件検討などを行った。令和 2 ~ 3 年度は、改変シャトルベクターを用いて本酵素領域(promoter 保有・非保有)を B. fragilis NCTC 9343 株へ導入し本酵素の機能解析を行った。これら組換え体について、Meropenem、Imipenem、Cefoxitin の MIC を測定したが、陰性コントロールと比べて有意差は認められなかった。現在、他系統薬を含めた基質特異性を調べるとともに、他の耐性因子の寄与や網羅的遺伝子発現解析を進めている。
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