研究実績の概要 |
Vibrio choleraeは遺伝子座MS6_A0927にmetY(M)遺伝子(1,269 bp)あるいはluxR-hchA(LH)遺伝子(約1,600 bp)のいずれかを有し、これにより2系統に大別されることを国際誌に発表した。131種類以上の血清型を含む341株の供試株の解析においても、両遺伝子を欠失したV. choleraeは見出されていない。世界各地で分離されているV. cholerae流行株は全てLH遺伝子を保有していた。LH遺伝子またはM遺伝子を破壊したV. cholerae株を作製し、表現型への影響について解析した。 ダブルクロスオーバー相同組み換えにより当該遺伝子座を破壊したV. cholerae を4株作製した。次に、野生株(親株)及び破壊株間の表現型を比較したところ、4株の破壊株中3株は、特に違いを認めなかったが、LH遺伝子を破壊した32426(⊿LH)株は、親株に比して通常の栄養培地では増殖能に差はないが、貧栄養培地では増殖能の遅延、運動性の低下、バイオフィルム形成能の増加、カタラーゼ産生の増加、ゼラチン/カゼインの分解能の低下が認められた。また、コレラ毒素産生能をGM1 ガングリオシドELISAによって測定した結果、32426株が647 ng/mLであるのに対し、その破壊株は25 ng/mLと約25倍の減少が確認された。株特異的に認められた現象であるので、LH遺伝子の破壊による影響かどうかを今後、検証する必要がある。V. choleraeの主要病原因子であるコレラ毒素の産生を著しく低下させた原因についての理解は特に重要であると思われる。
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