研究課題/領域番号 |
17K08829
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
児玉 年央 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (20346133)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポタシウムイオン / 腸炎ビブリオ / ゲートキーパー |
研究実績の概要 |
腸炎ビブリオの腸管病変には、小染色体上の3型分泌装置(T3SS2)が必須である。T3SSは宿主細胞に直接エフェクターを注入するタンパク分泌装置である。よって、エフェクターを宿主細胞に効率よく注入するには、宿主細胞との接触を感知し、分泌タンパク質の質と量を制御する必要がある。本研究では、VgpA、VgpBの機能解析を通して、T3SS2の細胞接触認識-分泌制御機構を明らかにすることを目的とした。 昨年度までにT3SS2の細胞接触刺激因子(Factor X)として、ポタシウムイオンを同定した。一般的に、ポタシウムイオン濃度は、細胞外(3.5-5.2mM)に比べて細胞内(130-145mM)で非常に高い。よって、腸炎ビブリオは、宿主細胞内の高濃度のポタシウムイオンを感知して分泌スイッチを切り換えている可能性が考えられたことから、T3SS2依存的な細胞毒性活性、ストレスファイバー形成活性、エフェクターの注入活性に対する宿主細胞内のポタシウムイオンの枯渇の及ぼす影響について検討した。その結果、宿主細胞内ポタシウムイオン枯渇によって、全てのT3SS2依存的な生物活性は細胞内ポタシウムイオンの枯渇によって有意に減少した。現在、ポタシウムイオンセンシング機構の解析を行っている。 以上のことにより、腸炎ビブリオのT3SS2は宿主細胞内の高濃度のポタシウムを感知することで、細胞接触を認識し、分泌スイッチを切り換えている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宿主細胞内の高濃度のポタシウムイオンがT3SS2の分泌切換因子、すなはち細胞接触刺激因子として作用することが明らかとなったことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題でvgpAおよびvgpB遺伝子欠損株が、過剰のエフェクター分泌活性を持つことが明らかとなった。この表現型を利用して、遺伝子欠損株の培養上清から新規エフェクターの同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験がおおむね順調に進捗し、条件検討等に充てるべき物品費が当初の計画より少なく済んだため。
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