研究課題
腸炎ビブリオの腸管病変には、小染色体上の3型分泌装置(T3SS2)が必須である。T3SSは宿主細胞に直接エフェクターを注入するタンパク分泌装置である。したがって、エフェクターを宿主細胞に効率よく注入するには、宿主細胞との接触を感知し、分泌タンパク質の質と量を制御する必要がある。本研究では、VgpA、VgpBの機能解析を通して、T3SS2の細胞接触認識-分泌制御機構を明らかにすることを目的とした。昨年度までにT3SS2の細胞接触刺激因子(Factor X)として、ポタシウムイオンを同定した。一般的に、ポタシウムイオン濃度は、細胞外(3.5-5.2mM)に比べて細胞内(130-145mM)で非常に高い。そこで、T3SS2依存的な細胞毒性活性、ストレスファイバー形成活性、エフェクターの注入活性に対する宿主細胞内のポタシウムイオンの枯渇の及ぼす影響について検討した。その結果、宿主細胞内ポタシウムイオン枯渇によって、全てのT3SS2依存的な生物活性は細胞内ポタシウムイオンの枯渇によって有意に減少した。次に、vgpAおよびvgpB遺伝子欠損株のエフェクター分泌亢進という表現型に注目し、培養上清から新規エフェクターの同定を試みた。その結果、新たに4種類のエフェクター候補を得た。それらの遺伝子欠損株を作製し、T3SS2依存的な細胞毒性活性を測定したところ、1つの遺伝子欠損株を除きT3SS2依存的な細胞毒性活性に対して有意な影響を及ぼさなかった。以上の結果により、腸炎ビブリオのT3SS2は宿主細胞内の高濃度のポタシウムを感知することで、細胞接触を認識し、分泌スイッチを切り換えている可能性が考えられた。この表現型は新規T3SS2エフェクターを同定する上で有用なツールになると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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