研究課題
潰瘍性大腸炎(UC)は大腸粘膜の慢性的炎症を来す疾患であり、その病因は未だ明らかではない。腸内細菌に対する過剰な免疫反応が病態のベースにあるが、どのような細菌が大腸粘膜の炎症を誘導するのか未だ結論は得られていない。本研究は、UC患者の血清IgGを指標として腸管炎症の誘導に関わる腸内細菌群の同定することを目的としている。最終年度は、潰瘍性大腸炎(UC)患者38名の血清IgGによって認識される腸内細菌の同定を行なった。UC患者における腸内細菌へのIgG結合率は0.4-89.7%と患者毎に大きな差が認められ、12名においては25%以上の高い結合率を示した。健常人4人での検討では、1.34-24.7%であった。UC患者をIgG結合率は結合率が25%以上と25%未満の2群に分け、高結合率群に特徴的なIgG結合腸内細菌を検索した。パラホルムアルデヒド固定した便懸濁液を患者血清より精製したIgGと混合した後、Protein G磁気ビーズを用いてIgG結合細菌をプルダウン法により回収し、DNAを抽出した。抽出したDNAを用いてIllumina Miseqと解析パイプラインであるQIIMEによるIgG結合腸内細菌の組成解析を行った。得られた菌叢組成データから、腸内細菌へのIgG結合率が25%以上のUC患者において有意に多いIgG結合腸内細菌を同定するため線形判別分析(LEfSe)を行なった。その結果、Protein G磁気ビーズを用いて25%以上のUC患者の便から回収したサンプルでは、歯周病原細菌であるAggregatibacter、腸内細菌であるEnterococcusやPrevotellaが有意に多いことが明らかになった。近年、Prevotella copriが関節炎の原因菌として注目されており、UCの病態修飾に関与している可能性が示唆された。
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Mol Med Rep
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J Pediatr Surg
巻: 54 ページ: 2514-2519
10.1016/j.jpedsurg.2019.08.048.