研究課題/領域番号 |
17K08836
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
岡 真優子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40347498)
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研究分担者 |
堀口 安彦 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00183939)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エキソソーム / マクロファージ / 結核菌 / 休眠 |
研究実績の概要 |
休眠状態の結核菌はマクロファージ内で持続潜伏感染できるため、結核肉芽腫には休眠期結核菌が潜んでいる。これらは、やがて再燃して増殖するため結核発症の要因となるが、結核菌の休眠と増殖の均衡を維持する機構は不明であり、再燃を抑制する因子の探索が進められている。近年、マクロファージの細胞外小胞(エキソソーム)は、ヘルパーT細胞を活性化することにより、細胞性免疫による結核発症を防御することが報告された。エキソソーム内には増殖期結核菌により産生されるタンパク質が検出されており、エキソソームを抗原とした血清抗体価の増大が引き起こされる可能性を考えた。我々は、休眠菌感染患者の血清で休眠菌に対する抗体価の増大を報告した。そこで、休眠期結核菌感染マクロファージのエキソソームが結核菌の持続潜伏感染に寄与する役割を明らかにするため研究を開始した。また、転写因子のhypoxia-inducible factor-1alpha(HIF-1alpha)は、マクロファージ内の糖代謝調節に関わる酵素の発現を増大して、マクロファージ内での結核菌の増殖抑制に作用することを明らかにした。そこで、HIF-1 alphaの発現とエキソソームに着目し、マクロファージ内結核菌の増殖と休眠の均衡が保たれる機構の解明を行っている。 まず低酸素状態で培養したウシ型結核菌の休眠菌をマクロファージに作用させた結果、増殖期結核菌と同様にHIF-1alphaの発現が増大した。また、増殖期および休眠期結核菌を作用させたマクロファージの培養液からエキソソームを精製し、エキソソームに内包されるタンパク質の網羅的解析を行っている。次に、これらエキソソームの非感染マクロファージへ作用させた後、炎症性サイトカインおよび抗炎症サイトカインの発現量を解析した。さらに、マクロファージの遺伝子発現変化を網羅的に解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト型結核菌は、BSL3レベルのためP3研究設備で行う必要がある。そのため、現在はBSL2のウシ型結核菌を用いて、マウスマクロファージとの相互作用を検討している。しかし、ウシ型結核菌はマウスマクロファージ内に持続感染できず殺菌される。これまで、増殖期および休眠期のウシ型結核菌はどちらもマクロファージのHIF-1alphaを増大させた。しかし、HIF-1alphaの発現は菌の殺菌に寄与しているため、持続潜伏可能なヒト型結核菌でその発現を検証する必要がある。そこで昨年度、ヒト型結核菌を用いた検証を開始した。 結核菌感染マクロファージから分泌されるエキソソームが非常に少ないため、解析に必要な十分量を確保するため時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
結核菌感染マクロファージに発現するHIF-1alphaは、マクロファージ内の糖代謝調節に関わる酵素の発現を増大させることでマクロファージ内での結核菌の増殖を抑制する。しかし、休眠期結核菌によるHIF-1alpha発現への作用は不明であった。本研究結果において、増殖期および休眠期のウシ型結核菌はマウスマクロファージに作用してHIF-1alpha発現を増大させることを明らかにした。そこで、休眠期ヒト型結核菌によるHIF-1alpha発現への作用を明らかにする。 次に、マクロファージから分泌されたエキソソームを解析し、増殖期と休眠期結核菌のマクロファージへの作用を分泌小胞を介した悲感染マクロファージへの作用から明らかにする。ウシ型結核菌感染時のマクロファージ由来エキソソームの解析から、エキソソーム内のタンパク量に変化がみられた。そこで、質量分析によりマクロファージタンパク質と結核菌タンパク質の発現比較を進める。マクロファージ内に存在する結核菌が発現するタンパク質とエキソソーム内での結核菌タンパク質を比較し、増殖期と休眠期の結核菌抗原に分けて解析する。さらに、ヒト型結核菌を作用させたマクロファージからエキソソームを精製して同様の解析を試みる。 結核菌存在下でのマクロファージのエキソソームは、T細胞を介したマクロファージ内での結核菌の増殖を抑制することが報告されているが、マクロファージに対する直接作用については知られていない。そこで、エキソソームを非感染マクロファージに作用させた後、炎症性および抗炎症性サイトカイン発現について検討した。エキソソームは、増殖期と休眠期のウシ型結核菌を作用させたマクロファージから精製し、両者のサイトカイン誘導作用を比較する。さらに、サイトカイン以外の遺伝子発現変化を網羅的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウシ型結核菌で進めていた実験を、改めてヒト型結核菌で見直すこととなり、前者の解析を一時的に止めることとなった。 次年度、二種の結核菌を用いた解析を進める予定である。
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