研究課題
休眠状態の結核菌はマクロファージ内で持続潜伏感染できるため、結核肉芽腫には休眠期結核菌が潜んでいる。これは、やがて再燃して増殖するため結核発症の要因となるが、結核菌の休眠と増殖の均衡を維持する機構は不明であり、結核制圧のために再燃を抑制する因子が重要だと考える。近年、マクロファージの細胞外小胞(エキソソーム)内には増殖期結核菌により産生される分泌タンパク質が検出されており、これらタンパク質がマクロファージの生体防御機能を高めている可能性がある。一方、休眠菌感染マクロファージのエキソソームについては詳細は不明である。我々は、陳旧性結核患者の血清で休眠菌に対する抗体価の増大を報告しており、エキソソームが抗体産生に関与した可能性を考えた。転写因子のhypoxia-inducible factor-1alpha(HIF-1alpha)は、マクロファージ内の糖代謝調節に関わる酵素の発現を増大し、マクロファージ内での結核菌の増殖抑制に作用することを明らかにした。これら酵素はエキソソームにより細胞外へ分泌されており、パラクライン作用をもつ可能性がある。そこで、休眠期結核菌感染マクロファージのエキソソームを解析した。増殖期結核菌感染時と同様に休眠菌感染マクロファージはHIF-1を発現した。また、エキソソームによる炎症性および抗炎症サイトカイン発現に違いはなかった。両結核菌感染マクロファージ由来エキソソームは解糖系酵素を内包しており、これによるマクロファージ内結核菌の増殖への作用に違いはなかった。本研究では、72時間の休眠菌と増殖期結核菌を感染させたマクロファージのエキソソームを比較し、内包タンパク質および炎症因子誘導作用に大きな違いの無いことを明らかにした。今後はマクロファージ内で菌を持続的に休眠させる手法を開発し、長期感染モデル細胞からエキソソームを精製したいと考える。
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