研究課題/領域番号 |
17K08844
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
黒田 誠 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, センター長 (80317411)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Streptococcus / 抗菌ペプチド |
研究実績の概要 |
小児脳膿瘍から分離されたStreptococcus intermedius TYG1620 株の抗菌活性物質Lanthionine 産生系(Interocin)を以下の方法にて生物学的および分子構造学的に解析した。抗菌活性を示す細菌種を薬剤耐性菌(MRSA等)を中心に株単位で詳細に検討し、ブドウ球菌属全般に抗菌活性を示したものの、至適な対象菌とは言い難い結果であった。 そこで、鼻腔に常在するS. intermedius の本来の競合菌種を鼻腔常在菌に有ると仮定し、鼻腔常在菌を血液寒天培地で集団として培養し、その培養菌液とTYG1620 を混合培養することで増殖阻害を示す対象菌種の特定をメタゲノム解析法にて実施した。LactobacillusおよびBifidobacterium属に増殖阻害の効果が見られた。さらに腸内細菌叢由来の菌種でも検討した結果、Lactococcus lactisに対し有意に増殖を抑える傾向が示唆された。上記の鼻咽頭および便由来由来の増殖阻害実験を総合して、病原細菌であるS. intermedius は常在菌と競合して有用な菌種との生存戦略で優位にたとうとしている可能性が示唆された。 さらにS. intermedius TYG1620 の培養上清の逆相HPLC低分子画分をHeLa培養細胞に添加すると特徴的な細胞死を見出し、低分子の病原性因子の存在も示唆された。今後、TYG1620 が産生する抗菌活性および細胞毒性を両面から追跡し、周りの常在性細菌を排除しながら病原性を発揮するメカニズムに迫りたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗菌活性を示す対象菌種の特定に近づきつつ有るが、その特異性を精査するための抗菌ペプチド増産および精製法の準備に時間を要したが、HPLC 等の精製機器類が整備され、抗菌活性・病原性を示す標品の精製準備がととのった。
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今後の研究の推進方策 |
Interocin 高純度品の精製法の最適化および抗菌活性の作用機序解析 ・平成30年度での精製手順の簡略・迅速化を目指し、限外濾過法や逆相クロマトグラフィー等の最適化を試みて、あらゆる精製法の組合せを検討する。MS/MSによる質量分析にて純度の確認とともに正確な分子量を特定する(受託解析)。抗菌活性を示す細菌種を対象に、MIC値の半分量(sub-MIC) を暴露させ、転写量の増減をRNA-seq にて判定し、阻害点と推測される代謝経路を特定する。(これまでの知見上、細胞壁もしくは膜構造の阻害が推測されている) Interocinの毒性評価 ・動物実験の前に各種培養細胞にて乳酸脱水素酵素(LDH)を指標にした毒性評価を行う。細胞毒性が低いことが示唆された場合には、次年度にてマウス動物実験にて毒性評価の追加解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成30年度分についてはほぼ使用済みである。 (使用計画)上記のとおり。
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